日本で一番有名な昔話といってもいい、桃太郎。
誰でも一度は絵本などで読んだことがありますよね。
昔話はさまざまな伝説や伝承からできた物語で、本当にあった出来事なのか気になるところ。
子供に聞かれて困ってしまう前に、桃太郎について知っておくと役立ちます。
今回は、お馴染みのみのあらすじを振り返り、さらに、桃太郎の原作や続編についても紹介します。
普段よく読む桃太郎の絵本も、魅力を再発見して楽しめますよ。
【桃太郎のストーリー】昔話・桃太郎のあらすじ内容
まずは、桃太郎のストーリーをおさらいしておきましょう。
誰もが知っている一般的なあらすじを紹介します。
桃太郎のあらすじ内容
むかしむかし、あるところに、子供のいないおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯にでかけました。
おばあさんが洗濯をしていると、びっくり。
川上からどんぶらこどんぶらこと、大きな桃が流れてくるではありませんか。
「大きな桃だこと。おじいさんと一緒に食べましょう」
おばあさんが持ち帰って桃を切ろうとすると、桃が2つにわれて、中から元気な男の子が出てきました。
おじいさんとおばあさんはとても喜び、男の子を“桃太郎”と名付け、大切に育てました。
たくましく育った桃太郎は、ある時おじいさんとおばあさんに言いました。
「悪い鬼が出て、村の人々を困らせているようです。私は、鬼が島へ鬼退治に行ってきます。」
桃太郎は、おばあさんが作ってくれた日本一のきび団子を腰に下げ、鬼ヶ島へと出発しました。
その途中、桃太郎はイヌに出会います。
「桃太郎さん、きび団子を1つ私にくださいな。」
「あげましょう。その代わり、鬼退治に付いてきてください。」
こうして、イヌは桃太郎の家来となり、一緒に鬼が島へ向かいました。
次に、サルがやってきました。
「桃太郎さん、きび団子を1つ私にくださいな。」
「あげましょう。その代わり、鬼退治に付いてきてください。」
こうして、サルも桃太郎の家来となり、桃太郎とイヌとサルは一緒に鬼が島へ向かいました。
次にやってきたのは、キジでした。
「桃太郎さん、きび団子を1つ私にくださいな。」
「あげましょう。その代わり、鬼退治に付いてきてください。」
こうして、キジも桃太郎の家来となり、桃太郎とイヌとサルとキジは一緒に鬼が島へ向かいました。
鬼ヶ島へのり込むと、鬼たちは酒盛りの真っ最中。
イヌは鬼に噛みつき、サルは鬼をひっかき、キジは鬼の目を突きます。
桃太郎は、金棒を振り回す鬼の大将と刀で戦い、ついに鬼は降参します。
こうして、勝利した桃太郎たちは、鬼から取り上げたたくさんの財宝を持って村へ帰りました。
桃太郎たちが無事に戻ると、おじいさんおばあさんは大喜び。
めでたしめでたし。
桃太郎の教訓
昔話は楽しい読み物としての一面のほか、どれも教訓があり、人生の道しるべとしても親しまれてきました。
桃太郎の教訓は何か、考えたことはありますか?
ヒーロー桃太郎が、悪事をはたらく鬼をやっつける、“勧善懲悪”のお話に、昔から人は夢中になりました。
正義が勝って悪は懲らしめられる、という教えは子供にも伝えやすいですね。
でも、桃太郎から得られる教訓はそれだけではないようです。
桃太郎は鬼ヶ島への道の途中、イヌサルキジと出会いお供にします。
一見すると、「役に立つの……?」と思ってしまうメンバーですが、4人それぞれの特技を生かした攻撃で、鬼を倒すのです。
このストーリーには、“誰でも得手不得手があり、足りないところは補い合い協力しよう”という教えが込められています。
現代に当てはめてみても、それぞれの個性を発揮し協力して目標へ向かうことは、とても大事ですよね。
この教訓も、桃太郎の絵本を読みながら、ぜひ子供に教えていきたいですね。
【桃太郎の起源】昔話・桃太郎は本当の話?
ここからは、気になる桃太郎の起源を探っていきます。
昔話で語られる、桃太郎のお話は本当なのか、ルーツをたどってみます。
桃太郎はいつから存在する?
桃太郎といえば岡山県が有名ですが、他にも昔話は全国に点在していて、どこでいつ頃から存在したかははっきり分かっていません。
諸説ありますが、桃太郎のお話の原型が出てきたのは、室町時代以前とされています。
また、鎌倉時代初期の軍記物語『保元物語』がもととなって作られたとも考えられています。
さらに、岡山県に伝わり、多くの桃太郎物語の根本になっている伝承をたどると、古代史にまでさかのぼるのです。
次では、桃太郎のモデルとなった伝承について詳しく解説します。
桃太郎は実話?起源・由来について解説
桃太郎の起源は、岡山県に残される“吉備津彦命(キビツヒコノミコト)の温羅伝説”に深く関わりがあります。
吉備津彦命は桃太郎のモデルになったといわれる神様で『古事記』(712年)や『日本書紀』(720年)にも登場します。
『日本書紀』では天皇によって吉備の国へ派遣され、人々を苦しめていた温羅という鬼を討伐します。
これが桃太郎のモチーフになっている“温羅伝説“です。
なんと、桃太郎の起源は日本の古代史にまでさかのぼるんですね!
吉備を平定した吉備津彦命が、実在したかは定かではありませんが、伝説の人物として長く語り継がれています。
吉備津彦命は、吉備津神社に神として祀られているほか、「鬼城山」など伝説ゆかりの場所もたくさん残されていますよ。
また、桃は日本神話の中でも邪気を払うために登場するなど、古くから神聖な食べ物として扱われていました。
吉備では、昔から桃が多く栽培されて魔よけの道具にも使われていたことも、桃太郎の由来と考えられています。
日本に伝わる温羅伝説と岡山の風土が、桃太郎の物語を生んだのですね。
【桃太郎の原作】昔話・桃太郎の作者は誰?原作は江戸時代?
これまで、桃太郎の物語の起源となる伝承を紹介しました。
では、私たちがよく知る昔話の桃太郎はだれがいつ作ったものなのでしょう?
諸説ありますが、『保元物語』(鎌倉時代初期)の源頼朝の武勇を描いたお話を真似て、桃太郎が作られたのではないかと考えられています。
私たちに馴染みある桃太郎の物語の形は、江戸時代の草双子で出てきました。
草双子は、江戸時代の子ども向けに出版されていた絵入りの娯楽絵本です。
草双子の桃太郎の物語はたくさんあり、なかでも藤田秀素の『むかしむかしの桃太郎』などで広まったとされています。
江戸時代から絵本として読まれていた桃太郎の物語、時代を経ても人気があるのは納得ですね!
【桃太郎の続編】昔話・桃太郎のその後は?
桃太郎の昔話に続編があることを知っていましたか?
昔から人気があった桃太郎は、たくさんの後日談が描かれているのです。
江戸時代に出された続編を3つ紹介します。
桃太郎の家来となった鬼と、下女のおふくは両想い。
それに嫉妬したサルが、桃太郎に告げ口すると3人とも追い出されてしまいます。
そこへ、鬼の婚約者が現れておふくが激怒し大変な修羅場に……!
宝を奪われた鬼が、桃太郎を殺そうと鬼の娘を桃太郎のもとへ送り込みます。
鬼の娘は、役目をよそに桃太郎と恋に落ち、結婚しました。
でも、自分の使命と桃太郎への愛の板挟みに苦しみ、自害してしまうのです。
おじいさんとおばあさんは、鬼退治で桃太郎が持ち帰った宝物でお金儲けをしたり、毎日遊びに興じたりするようになりました。
それを悲しんだ桃太郎は、宝物を偽物とすり替えます。
その後、再び鬼ヶ島へ行くことになった桃太郎ですが、鬼ヶ島ではなく吉原へ向かい、そこでお嫁さんをもらって家族を作り帰ったのでした。
【桃太郎の都市伝説】昔話・桃太郎は本当は怖い話だった⁈
桃太郎には他にもいろんな伝承があります。
物語によっては、桃太郎もヒーローではなく悪人とされているのです。
ここからは、桃太郎の都市伝説的な豆知識を紹介しますよ。
都市伝説①桃太郎は桃から生まれていなかった?
江戸時代に草双子で広まった当時の桃太郎は、桃を食べて若返ったおじいさんとおばあさんから生まれています。
桃は栄養価が高く、神聖な食べ物とされていましたから、若返り効果もあったのでしょう。
それが、明治以降に小学校の教科書に桃太郎が使われるときに、子供の教育上適さないとされ変えられたのです。
“桃から生まれた桃太郎”というよく知られた言い回しは、大人の事情で付け加えられたものだったのですね。
都市伝説②おじいさんがしているのは芝刈りではなかった?
桃太郎の最初で、おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯にでかけましたね。
柴刈りとは、山の雑木を刈って薪にしてお風呂や煮炊きに使ったり、売り物にしたりする仕事です。
芝生を刈っていたわけではないのですね。
勘違いしていた人も多いのでは?
都市伝説③なぜお供は「サル、イヌ、キジ」なの?
桃太郎のお供になって一緒に鬼ヶ島へ向かった、お馴染みのサルとイヌとキジ。
いろんな動物がいる中で、なぜこの3匹なのでしょう?これには陰陽道の思想が関係しています。
鬼に対抗する力を持った、裏鬼門(南西)の方角の動物である未は角があって鬼と通ずるため避けられました。
そのため、次の裏鬼門の方角の動物である申酉戌がお供に選ばれたと考えられています。
他にも、桃太郎に登場する桃やきびも裏鬼門に当てはまり、陰陽道との深い関わりが感じられますね。
都市伝説④桃太郎は実は悪人だった?
桃太郎はヒーローとして崇められ、神社に祀られているほどですが、実は悪人という見方もあります。
そもそも退治された鬼は、どんな悪いことをしたのでしょう?
鬼という存在そのものを一方的に悪として、桃太郎が宝を奪っていたのです。
明治以降の物語には、鬼が村から宝物や作物を奪うなど悪行をしたため、という理由が付け加えられました。
芥川龍之介の『桃太郎』(1924年)の中でも、桃太郎は仕事をなまけたいがために鬼ヶ島を征伐した略奪者、という描かれ方をしています。
確かに、鬼だからという理由で退治してしまうなんて、桃太郎こそ悪人だったのではと思ってしまいますね。
都市伝説⑤最後は宝物を取り戻した?それともお姫様を助けた?
桃太郎の締めくくりと言えば、鬼ヶ島から宝物を取り戻し帰ってくるのが定番ですよね。
でも、たくさんの桃太郎の物語の中には、宝物以外を持ち帰る話も存在するのです。
また、近年でもよく読まれている身近な絵本、松井直による『桃太郎』(1965年)では、最後にお姫様を取り戻します。
お姫様を助けることで、桃太郎の英雄度がより上がったお話になりますね。
【桃太郎の今】現代の昔話・桃太郎は昔と比べてどう変化している?
昔から伝わる桃太郎の物語を紹介してきましたが、時代によってお話に変化がありましたね。
さらに今、子供たちに読まれている現代版の桃太郎は、また少し変わっているのです。
パパママが親しんでいた桃太郎とも、違う点があるかもしれませんよ!?
【家来はいない!?】
昔の桃太郎では、イヌサルキジはきび団子をもらって桃太郎の家来となり、鬼ヶ島へお供しています。
現代版では、自ら鬼退治に“参加”して一緒に鬼退治する、“仲間”になっているのです。
鬼ヶ島への道中の舟でも、オール漕ぎは交代制。
桃太郎と3匹は、あくまでも平等な仲間というスタンスですね。
【宝物は自分のものにしませんよ!】
昔の桃太郎では、明治以前は鬼から宝物を奪い、明治以降は鬼が村から持ち去った宝物を取り戻しています。
そして、持ち帰った宝物は桃太郎一家のものになっていました。
現代版では、宝物を取り戻し村につくと、しっかり元の持ち主に返却しています。
いくら英雄桃太郎でも、鬼の財産を奪ったり、取り戻した品を自分のものにしては横領になりますね。
現代版には、より子供向けの道徳的配慮が感じられます。
他にも、悪い鬼を改心させて許していたり、桃太郎からお供へお礼を言っていたり、昔にはなかった桃太郎の変化がありますよ。
読み比べて見つけるのも、面白いですね。
【桃太郎の違い】地方ごとに昔話・桃太郎の内容は少し違う?
昔話は全国各地に伝承があり、いろいろな伝えられ方をしています。
その中で、各地方ごとさまざまな桃太郎の物語が語られているのです。
特に、独特なストーリーがみられる3県の内容を紹介します。
桃太郎の鬼退治後、鬼は悔しさから改心して一生懸命に働き、準備万端で桃太郎のもとへ。
だらだらの生活ですっかりなまっていた桃太郎たちは、鬼の逆襲に負けて、鬼は宝物を取り戻し帰っていきました。
桃太郎は反省して、まじめに働くようになったのでした。
桃を食べて若返ったおじいさんおばあさんから生まれた桃太郎は、鬼ヶ島へ。
お供にきび団子を5個6個と配る、気前の良い一面もありました。
鬼ヶ島へ向かっていると、鬼が海水を飲んで桃太郎たちの舟を引き寄せました。
桃太郎は鬼を征伐したものの、その後に鬼の逆襲にあいます。
再び鬼を制圧し、鬼を土の下に埋めました。
やっと鬼がいなくなり、平和になった村は“鬼無(きなし)”という地名になったといいます。
【桃太郎の絵本】昔話・桃太郎を読むのにおすすめの絵本は?
桃太郎の絵本はたくさんあり、物語の内容も対象年齢もさまざまです。
今回は、大人も子供も楽しめるおすすめ絵本を2冊紹介します。
ぜひ、子供と一緒に大人も楽しんでくださいね!
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『ももたろう』
作:松居直 絵:赤羽末吉
出版社:福音館書店
発売日:1965/2/20
値段:1,100円+税
リズミカルな言葉と力強い絵で、子供も夢中になる人気の絵本。
子供にぜひ一度は読ませたい、昔話の良さが詰まっていますよ。
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『空からのぞいた桃太郎』
作:影山 徹
出版社:岩崎書店
発売日:2017/9/1
値段:1,500円+税
上空からドローンで撮ったような絵も特徴的で、桃太郎の違う世界を見ることができます。
自分の知っている桃太郎を考え直してしまう、話題の一冊です。
【桃太郎のまとめ】定番の昔話を味わおう!
桃太郎の知らない世界が広がったでしょうか?
たくさんの物語が出版されている桃太郎。
それだけファンが多く、子供から大人まで人気の作品だということが分かります。
歴史も深く、長い間愛されてきた物語を、これからも伝えていきたいですね。
今回紹介したいろんな裏話を楽しみながら、ぜひ素敵な絵本時間を過ごしてくださいね。
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