日本の昔話の中でも有名な「さるかに合戦」を知らない人はいませんね。
主人公は「かに」で他にも「うす」や「くり」などユニークな登場人物が出てくるこのお話は人気が高く、古くから庶民に親しまれてきた物語です。
仲間たちとともに仇討ちをして最後には悪者には制裁が下るという筋書きは、人間が本来持つ勧善懲悪への素朴な思いが描かれているのです。
そんな「さるかに合戦」のあらすじを紹介しながら物語の持つ教訓や由来などを解説していきます。
昔話・さるかに合戦の登場人物
さるかに合戦は人は出てきませんが、動物以外にも人が使う道具などユニークな登場人物が出てきますよ。
かに:さるにだまされて死んでしまいます。
子がに:死んだお母さんかにから生まれた子供たち。
ハチ:子がにたちを哀れみ、いっしょに仇討ちをします。
クリ:栗の実。子がにたちの仇討ちを手伝います。
うす:お餅を作るための臼。子がにたちの仇討ちを手伝います。
牛のふん:はちに呼びかけられ子がにたちの仇討ちを手伝います。
昔話・さるかに合戦のあらすじ内容
ある日、さるとかにはいっしょに遊びに出かけます。
途中、さるは柿のタネをひろい、かにはにぎり飯をひろいました。
さるは柿のタネとにぎり飯を交換しようと言いますが、かにはにぎり飯のほうがいいから嫌だと断ります。
するとさるはこう言います。
「かきのたねのほうがにぎり飯よりずっといいぞ。にぎり飯は食べてしまえばおしまいだ。でも柿のタネは木になったらたくさんの実がなるぞ」
それを聞いたかには「なるほど。交換しよう」と、まんまとずるがしこいさるにのせられ、柿のタネとにぎり飯を交換します。
その後、かには柿のタネを地面にまくと世話をしながら歌いました。
きになれ きになれ ずんずかずん ならんとはさみでちょんぎるぞ
みをつけろ みをつけろ ざんざらざん つけんとはさみでぶっきるぞ
柿の木はちょんぎられては大変だとずんずん大きくなり、たくさんの実をつけ、かには喜んで柿の実を取ろうとしますが木に登れないので取ることができません。
そこにさるがやってきて、自分がとってやろうと言います。
けれどさるは柿の実をとってもかにには渡さず、自分ひとりでむしゃむしゃ食べています。
かにが自分にも柿をくれとさるに頼むと、さるはまだ青い実をもいで、かににむかって勢いよく投げました。
ぐしゃっ!
かには柿に潰され、たちまちぺしゃんこになって死んでしまいました。
さるはそれを見ると、笑いながらどこかへ行ってしまいました。
するとつぶれたかにのおなかから、たくさんの子がにが出てきて「おかあちゃんが死んだ」と、おいおい泣き出しました。
そこへハチがブーンと飛んできて叫びます。
「なんという悪いさるだ!このままではすまされん。ものどもあつまれ!」
ハチの呼びかけに、クリ、うす、そしてなんと、牛のふんまでやって来ます。
そしてみんなで悪いさるをこらしめることになり、さるの家へと向かいました。
さるの家に着くと、うすはさるの家の屋根にのぼり、クリはいろりの灰の中に入ります。
ハチは味噌桶の中に、牛のふんは玄関にべったりと座り、そして子がにたちは水瓶の中に隠れてさるをじっと待ちました。
しばらくするとさるがなにもなかったように戻ってきて、いろりの火にあたろうとします。
そこに隠れていたクリがパチーンとはねました。
「あちちっ!」
さるはやけどをして水瓶の中に手を入れると、今度は子がにたちがはさみでさるの手を切りつけます。
「いたたっ!」
さるは飛び上がります。
さてさて、みんはな悪いさるをこらしめることができるでしょうか?
昔話・さるかに合戦の最後の結末は?
さるかに合戦の結末はみごとな仇討ちで終わります。
さるは傷に味噌をつけようと味噌桶を開けると今度はハチがさるを思い切り刺し、驚いたさるは外へ飛び出し牛のふんにすべって転ぶのです。
そこへさるめがけて大きなうすがどすーん!と、思いきり飛び降ります。
ぺしゃん!
さるはきゅっとつぶれてあっという間に死んでしまいました。
みんなは悪いさるが死んで大よろこび。
めでたし、めでたし。
昔話・さるかに合戦から与えられる教訓とは?
さるかに合戦は仇討ち話が好きな庶民に昔からとても人気のある作品です。
うすや牛のふんなど個性的でユニークなキャラクターが、ずるがしこいさるをやっつけていく姿は痛快で胸がすくものがありますね。
かにが努力して作った柿の実を、さるがすべて奪うシーンは、必死に収穫した米を取り上げられていた昔の農民たちの姿が反映していると言えます。
理不尽な仕打ちに対して、なんとか抵抗したいという弱者の思いが投影されているのです。
だからこそ痛快な勧善懲悪の物語としてすぐれており、これほどの知名度があるのでしょう。
また子がにたちがお母さんかにを思う気持ちには子供たちもとても共感します。
どんな時代であれ親子の情愛は尊いものだ、ということも描かれているのですね。
そのようにさるかに合戦のお話にはさまざまな教訓が込めれています。
昔話・さるかに合戦はどこのお話?由来や原作は?作者やモデルとなった人物はいる?
日本の五大昔話の一つで、中世から末期に成立した物語だと言われています。
江戸時代の草双紙の一種の赤本にもさるかに合戦の物語は見られ、さる以外のキャラクターは擬人化されて描かれていました。
そのほかの多くの文献にも載っていたそうなので当時からの人気が伺えます。
動物が主人公の物語や仇討ちのはなしは類似のものが広く、アジア、ヨーロッパ、インドネシアにも伝承されていたので、伝わった物語が日本で複合的な物語となった可能性もあります。
さるかに合戦は地域によって多少タイトルが違い、「さるとかに」、「かにむかし」、「さるかにばなし」などと言われているところもあります。
また、柿のタネとにぎり飯を交換するのがメジャーなさるかに合戦のあらすじですが、実はちょっと違うバージョンのものもあるんですよ。
さるとかにはいっしょに田んぼを作り稲を育てますが、さるはぜんぜん働きません。
かには収穫した米で餅をつきますが、せっかく作った餅をさるが持って逃げる、というあらすじのものです。
昔話・さるかに合戦のおすすめ絵本を紹介
それではおすすめの『さるかに合戦』の絵本をご紹介します。
『さるとかに』
出典:honto公式サイト
絵:渡辺 三郎
出版社:チャイルド本社
発行日:2002年09月
値段:463円+税
対象年齢:幼児から小学生
『さるとかに』のおすすめポイント
チャイルド社の『みんなでよもう!日本の昔話』のシリーズです。
小さな子にもわかりやすいリズムある文章で書かれていて、とても読みやすくイラストもみていて愉快になります。
とくに、かにが歌う
きになれ きになれ ずんずかずん ならんとはさみでちょんぎるぞ
の、部分は子供としっしょに口ずさみたくなりますよ。
すでに第3版まで版を重ねていて、長く読み継がれているのも納得のさるかに合戦の絵本です。
『さるとかにのもちあらそい』
出典:honto公式サイト
絵:二俣 英五郎
監修:松谷 みよ子
出版社:小学館
発行日:2001年03月09日
値段:650円+税対象
年齢:幼児
『さるとかにのもちあらそい』のおすすめポイント
さるかに合戦のもうひとつのあらすじバージョンの絵本になります。
このあらすじで描かれたさるかに合戦の本はあまり見かけないのである意味貴重ですね。
通常のさるかに合戦の他にこういったあらすじのものもある、と昔話しの奥深さや豊かさを子供に伝えるのにも適していますよ。
昔話・さるかに合戦のまとめ
お馴染みの昔話しも詳しく知るとまた違った面が見えてきたのではないでしょうか。
そもそもさるとかに、という組み合わせ自体が、とても日本独特で個性的なものを感じさせますね。
個性的な登場人物の姿を楽しむもよし、仇討ちという物語から深い教訓を感じるもよし、で、新たな目でぜひさるかに合戦を読んでみてください。
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