白と黒。2色のみで展開するモノクロームの絵本の世界。
絵本といえば、鮮やかなイラストや豊かな色彩が注目される中、モノクロ絵本はその独特の世界観が多くの読者を惹きつけてやみません。
鉛筆のみのデッサン画や、白と黒の画用紙で表現されるモノクロ絵本は、読者の想像力をかきたて物語の中に強く引き込む力を持っています。
光と影が織り成す不思議な世界観に、いつしか夢中になってしまうことでしょう。
モノクロ絵本おすすめ人気ランキングを紹介
今回は、子どもと一緒に楽しみたいモノクロ絵本や、大人の心に静かな感動を呼び起こす有名モノクロ絵本をご紹介します。
厳選した10冊の中には、長年世界中で愛されてきたベストセラー本が数多く見られます。
新たな感動と共に、ぜひモノクロームの世界観を楽しんでみて下さい。
モノクロ絵本の選び方
「モノクロ絵本は初めてで、どの作品が良いか分からない」そんな時には次の3つのポイントに注目してみましょう。
たくさんのモノクロ絵本の中から「長くそばに置いておきたい」そんな一冊を見つけることができますよ。
モノクロ絵本の選び方1対象年齢で選ぶ
読者の想像力がその世界観を広げるモノクロ絵本を選ぶ際には、作品の対象年齢をチェックしてみましょう。
分かりやすい描写とリズム感溢れる文章で構成された絵本は、幼児期でも十分に楽しむことができます。
シンプルな文章とモノクロームのみで紡がれる物語であれば、大人が静かにページを開く絵本としても最適ですね。
モノクロ絵本の選び方2物語のテーマで選ぶ
絵本を選ぶ時に重要視したいのが、物語のテーマ性。
親子愛や友だちとのつながり、子どものワクワク感を駆り立てる冒険物語など、モノクロ絵本のテーマも様々です。
興味のあるテーマのモノクロ絵本を選ぶことで、より一層その世界観に浸ることができるでしょう。
モノクロ絵本の選び方3ベストセラー本から選ぶ
白と黒のみで描かれるモノクロームの世界は、海外で古くから用いられてきた手法です。
そのため、人気のモノクロ作品には海外のベストセラー絵本も数多く見られます。
はじめてモノクロ絵本を選ぶという際には、ベストセラー本から選ぶこともおすすめのポイントと言えるでしょう。
モノクロ絵本おすすめ人気ランキング10選
ここからは、人気のモノクロ絵本をランキング形式でご紹介していきます。
物語のあらすじや、おすすめポイントなどを参考に、ぜひモノクロ世界の扉を開いてみて下さいね。
第10位『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』
訳:村岡 花子
出版社:福音館出版
発行日:1961/8/1
価格+税:1,320円
機関車好きな子どもも大満足のモノクロ絵本
ちゅうちゅうは小さな機関車。客車や貸車を引いて、駅を走り回ります。ある日いたずら心が湧いたちゅうちゅうは、みんなの注目を集めようと駅を飛び出してしまいます。勝手に走り回るちゅうちゅうに、周りのみんなは大困惑。やがて暗くなり、道も分からなくなったちゅうちゅうを迎えに来てくれたのは、最新式の機関車に乗った機関士だったのでした。
全編モノクロで描かれている機関車絵本は、「ちいさなおうち」で知られるバージニア・リー・バートンのデビュー作ともなる作品です。
1937年に機関車が好きな息子に向けて描かれてから現在まで、世界中で愛されるロングセラーに登場するのは、わんぱくな機関車ちゅうちゅう。
日本語の「しゅっしゅ、ポッポ」にあたるちゅうちゅうの名前を持った機関車の大冒険に、子どもも目を輝かせずにはいられません。
いたずら大好きなちゅうちゅうが、信号も無視して走り回るモノクロの世界は躍動に溢れています。
最後には自分を迎えに来てくれた機関士に、いたずらを反省して真面目に働く事を約束するちゅうちゅう。
乗り物好きの子どもにもおすすめの、何度も読み返したくなるモノクロ絵本です。
第9位『びりびり』
出版社:ビリケン出版
発行日:2000/10
価格+税:1,320円
ふしぎな生き物びりびりと楽しいリズムの言葉の共演
ぼくの時計をパクパクたべた。それはビリビリ。「こら、ビリビリ。そら、ビリビリ」軽快なリズムに乗って不思議なキャラクター、ビリビリが大あばれ。36年の時を経て復刻した、東君平のデビュー作。
びりびりは、一枚の黒い紙を破いて誕生したふしぎないきもの。
びりびりという名前をつけたとたんに、ひとりで歩きだしてあちこちでいろんなものを食べてしまいます。
モノクロのページの中で、分裂を繰り返し増えていくびりびりの姿は迫力満点。
繰り返し登場する言葉のリズムも楽しく、2色のみで描かれているびりびりの世界がイメージの中でどんどん広がっていきます。
ちょっと不思議なモノクロの世界観には、小さな子どももいつしか夢中になってしまいます。
読後には実際に紙をちぎりながら、びりびりを作って遊んでみるのも楽しいですね。
第8位『アンジュール ある犬の物語』
出版社:BL出版
発行日:1986/5/1
価格+税:1,430円
モノクロのデッサン画のみで描かれる切ない物語
車から投げ捨てられてしまった一匹の犬。必死に後を追うものの、車はあっという間に見えなくなってしまいます。野良犬になってしまった犬は、長い間街をさまよい歩くことに。辿り着いた町で出会ったのは、犬とおなじく、ひとりぼっちの子どもだったのでした…。白黒のデッサン画のみで描かれる、字のない名作モノクロ絵本。
文章のないモノクロ絵本は、鉛筆1本のみで描かれたデッサン画で物語が進行していきます。
1ページを仕上げるために描かれる下絵は、なんと100枚以上。
情景を説明する言葉がないにも関わらず、そのページの随所から、ひとりぼっちになってしまった犬の悲しみや、歩き回った時間の長さを感じずにはいられません。
絵のみで多くの人の心を揺るがせてきた本作は、まさにモノクロ絵本の真骨頂とも呼べる作品となっています。
ひとりでゆっくりとその世界観に浸る事はもちろん、子どもと一緒に犬の心情を想像しながら読み進める事もおすすめです。
第7位『海のおばけオーリー』
訳:石井 桃子
出版社:岩波書店
発行日:1974/7/8
価格+税:1,650円
時代を越えて愛されるモノクロアザラシ絵本
「おばけだ!おばけのオーリーがでた!」湖に現れた不思議な生き物に、町は大騒ぎ。ところがおばけの正体は、おかあさんとはぐれてしまった子アザラシだったのです。マンガ仕立てのコマわりで展開される、可愛らしいモノクロ絵本。
発行から80年以上のベストセラーとなる本作は、登場人物の服装や風景に当時のアメリカの雰囲気が溢れている作品です。
海のおばけに間違われたオーリーは、水兵にさらわれてしまったかわいい子アザラシ。
おかあさんと引き離され水族館に連れてこられたオーリーの冒険に、読者も目を離せなくなってしまいます。
登場する動物屋の主人や、水族館の飼育係のおじさんたちはみな優しく、動物の生態や親子の愛情に溢れたストーリーは子どもへの読み聞かせにもおすすめです。
内容の充実した長編作品のため、じっくりと読み進めたい時にぴったりのモノクロ絵本と言えるでしょう。
第6位『はなをくんくん』
イラスト:マーク・シーモント
訳:木島 始
出版社:福音館出版
発行日:1967/3/20
価格+税:1,210円
白黒の世界に映える春の訪れ
野ネズミやクマの親子にリスたち…。雪に埋もれた静かな森の中、動物たちは丸くなりながらじっと春の訪れを待っています。ところが、ある日突然目を覚ました動物たちは、はなをくんくん。いっせいに同じ方向へ向かって走り出します。やわらかなタッチの世界が多くの人の心を温める、モノクロ絵本のベストセラー。
マーク・シーモントのモノクロの世界が描き出すのは、雪の降る静かな森と動物たち。
白と黒の2色しかないにも関わらず、やわらかで繊細なタッチのイラストはからは、動物の柔らかさと穴倉の温かさを感じることができます。
「はなをくんくん」させた動物たちが気付いたのは、待ちわびていた春のにおい。
みんなが一斉に走り出した先に見つけたのは、真っ白な雪の中に咲く一輪の黄色い花なのでした。
春を待ちわびる冬の夜、あたたかな部屋で子どもと一緒に読みたくなる、おすすめモノクロ絵本となっています。
第5位『もりのなか』
訳:まさき るりこ
出版社:福音館出版
発行日:1963/12/20
価格+税:1,100円
子どもが夢中になるファンタジックなモノクロ世界
ラッパを持って、森へでかけた男の子。ライオンにゾウ、クマにカンガルー…ラッパの音を聞いて動物たちが次々に現れます。いつしか動物たちは散歩の列に加わって、ラッパを吹く男の子を先頭に楽しい行列ができあがります。うっそうとした森の魅力と動物たちの不思議な姿を、白黒の世界で表すロングセラー絵本。
男の子の不思議な体験を描き出す本作は、1963年に発行されてから世界中で愛されてきたモノクロ絵本です。
くしで髪をとかすライオンや服を着るゾウなど、お話にはファンタジックな要素がいっぱい。
大人の知らない世界で動物と友だちになるストーリーには、子どもも引き込まれてしまうことでしょう。
ラストにはかくれんぼをしているうちに、動物たちは姿を消してしまいます。
代わりに現れたのは、男の子を探しにやってきたお父さんです。
モノクロの森の不思議な世界が気に入った方は、続編にあたる「またもりへ」もぜひチェックしてみてくださいね。
第4位『光の旅かげの旅』
訳:内海 まお
出版社:評論社
発行日:1984/1/1
価格+税:1,430円
モノクロで体験するふしぎな逆さ絵本
光のさす明け方、車に乗って家を出発進行です。農場をすぎ海岸線を走り…夕方には陽は沈んでしまいました。では、今度は本を逆さまにしてみたら…あらふしぎ。暗くなった町に灯りがともり始めます。モノクロ世界が不思議な体験をもたらす、人気の知的絵本。
前半は日中の景色、後半は絵本をくるっと逆さまにして夜の風景。
モノクロで描かれた逆さ絵本は、1冊で2度楽しめる不思議な魅力に溢れています。
昼間白く伸びていた道は、夜には稲妻に。町ビルの窓は夜空に輝く星空にと、綿密に計算されたしかけには、大人もわくわくしてしまいます。
もちろん、驚きの体験ができるモノクロ絵本は子どもにも大人気。
大勢の読み聞かせの場でも、本を逆さにしたとたんに歓声が聞こえてくることでしょう。
一風変わったモノクロ絵本をお探しの方に、ぜひおすすめしたい一冊です。
第3位『ジュマンジ』
訳:辺見まさなお
出版社:ほるぷ出版
発行日:1984/7/1
価格+税:1,430円
白黒の世界が織り成すスリル満点の物語
木の下に置いてあったゲーム「ジュマンジ」。退屈していたピーターとジュディは、ゲームをやってみることに。サイコロをふり、コマを進めると、動物たちが目の前に現れたからさあたいへん。現実と幻想のはざまを描き出す、オールズバーグの大作絵本。
コンテ鉛筆でモノクロ世界に光と影を生み出すのは、「急行北極号」でも知られるクリス・ヴァン・オールズバーグ氏。
映画化もされた本作は、ジャングルのボードゲームが現実になってしまうという、手に汗握る展開の物語です。
本物のライオンが現れたり、火山が噴火してしまったり、スリルに満ちた冒険は誰かが「ジュマンジ」にたどり着かなければ終わりません。
白黒のみで描かれているにも関わらず、その様子はまさに迫力満点。読者の想像力と相まってたくさんの色彩を生み出します。
ストーリー性を楽しむことのできるようになった、小学生の子どもたちへぜひおすすめしたい冒険物語です。
第2位『くまとやまねこ』
イラスト:酒井 駒子
出版社:河出書房新社
発行日: 2008/4/17
価格+税:1,430円
「時間」と「命」について静かに語り掛ける名作モノクロ絵本
突然最愛の友だち、ことりを亡くしてしまった、くま。くまは泣きながら木箱を作り、花をしきつめ、そっとことりを入れてあげます。悲しみのあまり暗い部屋に閉じこもってしまうようになった、くま。やがてくまに訪れる、新しい時のかがやき。
酒井駒子さんの心のこもった絵で綴られるモノクロ絵本は、大切な人が突然亡くなってしまうというショッキングな出来事から始まります。
ことりを寝かせた木箱を持ち歩く、くま。木箱を見せられるたびに、動物たちは少し困った顔をしてこう言います。
「くまくん、つらいだろうけど、わすれなくちゃ」
大切な人を亡くした胸の痛みは、誰も代わってあげることはできません。
締め切った部屋に閉じこもり、自分の時間を止めてしまう、くま。
しかし、そうしている間にも、周りでは静かに、そして確実に新しい時が流れていくのです。
光と影で織り成される絵本の世界は、まるで生と死に通ずる舞台のよう。
悲しみに閉じこもっていたくまが外へ出かけられたように、一度失った心にも、必ず新しい陽が射す時がやってくる。
静かに、しかし力強くそう語り掛けてくれる、感動のモノクロ絵本です。
第1位『ペニーさん』
訳: 松岡 享子
出版社:徳間書店
発行日:1997/7/1
価格+税:1,430円
しあわせとは?家族とは?を教えてくれるモノクロ絵本のベストセラー
お金はなくとも、動物たちと幸せに暮らしているペニーさん。ところがある日、動物たちがお隣の畑を荒らしてしまったから大変です。怒ったおとなりさんは、ペニーさんに損害賠償を要求します。困ったペニーさんを救うおうと、動物たちがとった行動とは…?
「これがペニーさんです」と、赤いカバーにモノクロで描かれた表紙が印象的な絵本です。
作者のマリー・ホール・エッツは、「生まれながらのストーリーテラー」とも称される絵本作家。
デビュー作である「ペニーさん」は、文量があるにも関わらず子どもにも人気の作品となっています。
年老いたペニーさんの大切な大勢の家族は、年取った馬や牡牛、やぎや子羊に鶏といった動物たち。
いつも動物たちのために働いているペニーさんの危機を救ったのも、大切な家族である彼らです。
いつも怠けていた動物たちが労働の歓びを知るだけでなく、「ウドルじゅうでいちばんの幸せ家族」と呼ばれるようになる物語には、大人も子どもも夢中になってしまいます。
読み応えのあるモノクロ絵本「ペニーさん」の世界を満喫した後には、続編である「ペニーさんと動物家族」もぜひチェックしてみてくださいね。
モノクロ絵本、白黒のイラストはいつまでも心に残る!
白と黒の2色のみで物語を描き出すモノクロ絵本は、そのストーリー性が多くの絵本ファンから支持されています。
今回ご紹介した絵本は、どれも一度ページを開けば物語の世界に引き込まれ、胸を打つ静かな感動に溢れた作品ばかりです。
名作と呼ばれる作品の数々は、「モノクロ絵本」の世界に浸る喜びを存分に教えてくれることでしょう。
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