『おやゆびこぞう』というグリム童話を知っていますか?
グリム童話といえば『赤ずきん』や『白雪姫』などが有名ですね。
女の子が主人公の話が多いイメージのグリム童話ですが、実は男の子が主人公のものもたくさんあるんです。
今回は、親指ほどの小さな“小僧”が大活躍する『おやゆびこぞう』をご紹介します。
男の子ならではの破天荒な行動と、ハラハラドキドキするような展開に、子どもはもちろん大人も惹き込まれますよ。
登場人物やあらすじなど詳しく解説していきますので、ぜひ童話選びの参考にしてくださいね。
グリム童話・おやゆびこぞうの登場人物と名前
まずは『おやゆびこぞう』に出てくる登場人物と名前をご紹介します。
貧乏な百姓…おやゆびこぞうの父親。
おかみさん…貧乏な百姓の奥さんであり、おやゆびこぞうの母親。
旅人たち…おやゆびこぞうを見世物にしようとたくらむ悪者。
泥棒たち…お金持ち牧師のお宝を盗もうと計画する悪者。
牛…干し草を食べたときに、間違っておやゆびこぞうも一緒に食べてしまった動物。
狼…牛の胃袋におやゆびこぞうが入っているとは知らず、牛を食べた動物。
グリム童話・おやゆびこぞうのあらすじ内容
むかし、あるところに貧しい百姓とおかみさんが住んでいました。
2人には子どもがおらず、近所の子どもを見てうらやましく思う日々。
「どんなに小さくてもいいから子どもが欲しいわ」
すると、おかみさんに赤ちゃんができたのです。
産まれた男の赤ちゃんは、本当に親指ほどの大きさでした。
百姓とおかみさんは喜び、“おやゆびこぞう”と名付けます。
おやゆびこぞうは愛情を受け、とても賢くなりました。
あるとき、親指ほどの子どもがいるという噂を聞いた旅人たちが、おやゆびこぞうで一儲けしようと、百姓の家にやってきます。
「金を出すから子どもを売ってくれないか?」
旅人たちは金と引き換えに、おやゆびこぞうを渡せというのです。
「無理だよ!大切な子どもなんだ!」
百姓夫婦は拒みましたが、それを見ていたおやゆびこぞうが一言。
「大丈夫!すぐに戻ってくるから、ぼくを売っておくれ」
こうして、おやゆびこぞうは家を離れることに。
家を出てしばらくすると、おやゆびこぞうは旅人たちにお願いをしました。
「用を足したいので、おろしてください」
旅人たちの手からおりたおやゆびこぞうは、スイっと穴に隠れます。
「うまく逃げ切れた!」
(そのまま自宅に戻ると思いきや……)
近くで泥棒たちが牧師のお宝を盗む計画を立てている声が聞こえます。
おやゆびこぞうは「お宝を盗んであげます」といって、泥棒たちについて行きました。
現地に着くと、大きな声で「何をどれだけ取ったらいいですか」と泥棒たちに話しかけるおやゆびこぞう。
大声を聞いた女中が部屋に入ってきたので、泥棒たちは慌てて逃げました。
おやゆびこぞうは、干し草の中に隠れます。
しかし、牛が干し草を食べてしまい大変!
おやゆびこぞうは牛の胃の中へ……。
牛の中から必死に大声を出すおやゆびこぞう。
「牛が口をきくなんて気味悪い」と女中は牛を殺します。
すると今度は、狼がやってきて牛を丸呑みしたのです。
予期せぬことが次々に起こる展開。
おやゆびこぞうは無事に狼のお腹から脱出できるのでしょうか?
グリム童話・おやゆびこぞうの最後の結末は?
狼に牛の胃袋ごと丸呑みされたおやゆびこぞう。
とても賢いおやゆびこぞうは、狼のお腹の中で知恵をしぼりました。
「狼さん、ご馳走がある場所を知っています!」と、お腹の中から狼に話しかけ、自分の家の食品貯蔵庫に案内します。
たらふく食べた狼は、お腹が重くて動けません。
そこで、おやゆびこぞうは大声で「ぼくは狼のお腹の中だよ!」とさけびます。
声に気付いた百姓夫婦が狼をやっつけ、おやゆびこぞうは無事に助け出されました。
もう2度と離ればなれにはならないと、かたく誓った3人なのでした。
グリム童話・おやゆびこぞうの意味・教訓、伝えたいこととは?
『おやゆびこぞう』には、一見不利だと思えることも視点を変えると有利になる、自分にしかできないことを考え、行動しよう!という教訓が込められています。
とても体が小さいおやゆびこぞうは、重たい荷物を持ったり高いところの物を取ったりすることはできません。
しかし、誰も入れないような狭い場所をくぐり抜けたり、見つからないように隠れたりするのは簡単にできます。
今の自分には何ができるだろう?と考えることは、これから先やってくるかもしれない困難に、勇敢に立ち向かう糧となりますよね。
また、人に頼らずに何かを成し遂げることができれば、自信にもつながります。
誰にでも苦手なこと・できないことはあるもの。
『おやゆびこぞう』からは、逆境を乗り越えて強い人間になってほしい・果敢に挑戦してほしいというメッセージ性を受け取ることができます。
グリム童話・おやゆびこぞうの原作・初版は?作者、国や時代についても解説
『おやゆびこぞう』は、ヤーコプ・グリム とヴィルヘルム・グリムの兄弟が編集を手がけた「グリム童話」の中の一作です。
グリム兄弟は、ドイツの言語学者であり文学者や法学者としても有名です。
グリム童話の初版第1巻は1812年、第2巻は1815年に出版。
その後複数の改訂版が出版され、1857年に第7巻出版となっています。
『おやゆびこぞう』は第2巻から第7巻までにおさめられています。
グリム童話が成立したのは、ナポレオンの急進と没落後のウィーン体制で、ドイツが乱立状態にあった頃。
ドイツの統一実現のため、ゲルマン民族共通の言語や古典が必要と考えられた背景がありました。
『おやゆびこぞう』を含むグリム童話におさめられた話は、グリム兄弟の元に集めた教養ある女性たちによって、口頭伝承されたものです。
女性の中にはフランスがルーツの人も含まれていたため、実際にはフランス由来の話も多くありました。
しかし、純粋にドイツの童話編集を意図していたグリム兄弟は、そのことには言及せず後の研究によって明らかになっています。
グリム童話・おやゆびこぞうにまつわる都市伝説や疑問について考察
ここでは『おやゆびこぞう』に関連する疑問や噂をピックアップしました。
グリム童話・おやゆびこぞうには複数の物語がある?!
実は『おやゆびこぞう』には、今回ご紹介したグリム版の内容の他にも2種類の話があります。
イギリスのJ・ジェイコブズとフランスのシャルル・ペローによって再話されたものです。
J・ジェイコブス版は、子どものいない夫婦に魔術師が親指ほどの子どもを授けて育てさせ、成長したのちに鬼退治をして様々な冒険をするストーリー。
シャルル・ペロー版は、貧しい夫婦のもとに生まれた親指ほどの小さい子どもが、お金がなくて子どもを育てられないと山奥に捨てられます。
助けを求めて入った家に人喰い鬼がいて怖い思いをしますが、いろいろな方法で無事に自分の家へ帰り着くというストーリーです。
グリム童話・おやゆびこぞうは日本の昔話『一寸法師』に似ている?!
親指ほどの大きさの子どもが主人公の『おやゆびこぞう』は、体が小さい様子から『一寸法師』と話の内容が似ているのでは?との疑問があるようです。
『一寸法師』は鬼退治をしたあと、お姫様にうちでの小槌で大きくしてもらい青年になるのに対し、『おやゆびこぞう』は最後まで小さいままです。
また『おやゆびこぞう』にはお姫様や結婚などの内容も出てきませんね。
とはいえ、両者の共通点は“体がとても小さい”こと。
そして、ジェイコブス版、ペロー版には鬼が出てくる点も共通しています。
話の流れは違いますが、共通点もありますね。
決定的な違いは『一寸法師』は大きく成長するのに対し『おやゆびこぞう』は小さいままだということ。
グリム童話・おやゆびこぞうのおすすめ絵本を紹介
『おやゆびこぞう』は様々な出版社が絵本を発行しています。
ここでは、おすすめの絵本をご紹介しますね。
『おやゆびこぞう』
画像引用;yodobashi.com
出版社:評論社
発行日:1981年12月
値段:1,400円+税
対象年齢:小学生頃から
『おやゆびこぞう』のおすすめポイント
グリム版のおやゆびこぞうです。
親指ほどの大きさしかない男の子が、知恵をはたらかせて欲深い男たちや泥棒たちを相手に奮闘します。
冒険の途中では狼にも遭遇!
小さな体でいろいろなことにチャレンジし、困難を乗り越えていく物語です。
『ペロー原作 おやゆびこぞう』
画像引用:amazon.co.jp
出版社:西村書店
発行日:2010年03月31日
値段:800円+税
対象年齢:幼児から
『ペロー原作 おやゆびこぞう』のおすすめポイント
貧しい木こりの家には7人の子どもがいます。
1番下の子どもは親指ほどの大きさしかないけれど、とても賢い男の子。
ある日7人は、人食い鬼の住む家に迷い込んでしまいました。
このままでは、とても危険です。
一体、どうすれば逃げ出すことができるでしょうか?!
ペロー版の物語です。
どのような機転をきかせて鬼から逃げ出すのか、チェックしてみてください。
グリム童話・おやゆびこぞうのまとめ
『おやゆびこぞう』の話をご紹介しました。
危なっかしい場面もありましたが、持ち前のポジティブさと頭の回転のはやさで困難を乗り越えていったおやゆびこぞう。
自分の持って生まれた特性を最大限に活かすことが、楽しく生きていく秘訣なのかもしれませんね。
読書の時間に『おやゆびこぞう』をはじめとするグリム童話を、ぜひ楽しんでください。
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