みなさんは、『長靴をはいた猫』という童話を知っていますか?
題名は聞いたことあるけど内容はあまり知らない人も多いのではないでしょうか。
『長靴をはいた猫』はグリム童話のひとつです。
グリム童話は昔から伝わるヨーロッパの民話を集めた童話集です。
代表的なものに、『シンデレラ』や『赤ずきん』、『ヘンゼルとグレーテル』などがあります。
今回はそんなグリム童話・長靴をはいた猫について詳しく解説します。
あらすじや原作、物語から得られる教訓なども紹介します。
この記事を読めば、グリム童話・長靴をはいた猫の新たな魅力に気がつき、より物語を楽しむことができますよ。
グリム童話・長靴をはいた猫の登場人物と名前
はじめに、グリム童話・長靴をはいた猫の主な登場人物を紹介します。
末息子が父親から譲り受けた猫:とても賢く、さまざまな手段を使って、末息子を幸せにしようとします。
王様:王様は、賢い猫のお陰で、末息子のことをたいそう気にいることになります。
人食い鬼:どんなものにも化けることができる、とても恐ろしい鬼です。そんな人食い鬼を、猫がどう欺くのかも見所の一つです。
グリム童話・長靴をはいた猫のあらすじ内容
あるところに、とても貧しい粉ひきの一家がありました。
ある日、粉ひき一家の主人が病気で亡くなると、3兄弟は、父親の財産を分けることにしました。
長男は粉ひき小屋を、次男はロバを、そして末息子は猫をもらいます。
「猫を食べてしまったら、何も残らなくなってしまう」
嘆く末息子に、猫は言います。
「心配いりません。私に長靴と袋をください。そうすれば、必ずあなたを幸せにしてみせます」
末息子が長靴と袋を渡すと、猫はうさぎを捕まえて、王様の元へと向かうのでした。
「我が主人のカラバ公爵より、狩りの獲物を献上しに参りました」
カラバ公爵とは末息子のことです。
王様はとても喜び、その後もこのようなことを繰り返すことで、猫と王様は親しくなっていきます。
ある時、猫は末息子に、川で水浴びをするよう言いました。
そこを通りがかった王様に、猫は声を掛けます。
「大変です!カラバ公爵が水浴びをしている間に、泥棒に服を盗まれてしまいました!」
王様は、カラバ公爵と聞くと、すぐに末息子に立派な衣服を与えました。
そして、王様をカラバ公爵の城に招待することになり、猫は人食い鬼の城と土地を末息子のものにしようと画策します。
猫は王様の馬車を先導しながら、村人たちに指示を出します。
「ここは誰の土地かと聞かれたら、カラバ公爵の土地だと言え」
さらに、そうしなければ噛み殺してしまうぞと脅すのです。
「この土地は誰のものか」
「カラバ公爵の土地でございます」
王様は、村人たちが口々に答えるのを聞いて、たいそう感心しました。
猫は一足先に人食い鬼が住むとても大きな城に到着します。
「あなたのような人は、ライオンにも化けることができるのでしょうか」
猫が人食い鬼をおだてると、鬼は得意気に大きなライオンに変身します。
「いくらあなたでも、小さなねずみに化けることはできないでしょう」
猫の挑発に乗った人食い鬼は、そんなのは簡単だとあっという間に小さなねずみに。
猫はしめたと思って、そのねずみを捕まえて食べてしまいました。
そして王様が到着すると、猫は「ようこそ。カラバ公爵の城へ!」と出迎えました。
グリム童話・長靴をはいた猫の最後の結末は?
王様は、カラバ公爵の持つ土地の広さと城の大きさにますます感心します。
もともと末息子は人柄が良かったので、姫は彼にどんどん惹かれていきました。
それに気がついた王様は、末息子に娘婿になってくれるようお願いします。
末息子と姫は、その日のうちに結婚することになりました。
貧しかった末息子を幸せにした猫は貴族の称号を得ます。
そして趣味でねずみ捕りをしながら、お城でのんびり暮らしたのでした。
グリム童話・長靴をはいた猫の意味・教訓、伝えたいことは?
ここでは、グリム童話・長靴をはいた猫から得られる教訓について考えていきます。
グリム童話・長靴をはいた猫では、貧しい粉ひきの末息子に食料にされてしまうところだった猫が、頭を使ってこの現状から脱出する方法を考えます。
そして思いついたのが、末息子をカラバ公爵という架空の人物に仕立て上げ、自ら王様と仲良くなり、王様の娘と結婚させるというものだったのです。
この物語は、自分の置かれた現状に黙って従うのではなく、なんとかして変えようと行動することの大切さを教えてくれます。
理不尽なことがあっても、諦めて我慢したり、誰かが助けてくれるのを待っていてはいけません。
現状を変えたければ、自分で考えて行動することが重要なのです。
グリム童話・長靴をはいた猫の原作初版は?作者・国や時代についても解説
『長靴をはいた猫』は1697年にシャルル・ペローというフランスの詩人によって発表されました。
彼は、誰もが知っている『シンデレラ』や、『赤ずきん』、『眠れる森の美女』なども書いています。
後に、長靴をはいた猫のお話は、1812年に出版されたグリム兄弟の書籍でも紹介されることに。
グリム童話集は、ヨーロッパに昔から伝わる民話を集めたもので、ほかに『ブレーメンの音楽隊』や『ラプンツェル』など、現代でも世界中で広く知られている物語がたくさんあります。
グリム童話・長靴をはいた猫にまつわる都市伝説や疑問について考察
ここでは、グリム童話・長靴をはいた猫の都市伝説について解説していきます。
①グリム童話・長靴をはいた猫ではなぜ長靴を履いていた?
まず、なぜ猫は長靴を履かなければならなかったのでしょうか。
この頃のヨーロッパでは、長靴を履くことは貴族の証でした。
猫が長靴を履いて王様の元へ行くことで、王様もこの猫のことを、権力を持つものとして受け入れたのです。
また、カラバ公爵の城へ向かう途中で出会う村人たちにも、長靴を履くことで権力があることを示して、言うことを聞かせることができたのです。
猫は人間のペットというイメージがありますが、そんな猫でも、貴族の証である長靴を履いていると、服従しなければならないというヨーロッパの時代背景を感じさせます。
②グリム童話・長靴をはいた猫には、もう一つの教訓があった?
グリム童話をはじめとした昔話には、それぞれ教訓が盛り込まれています。
物語を読んだ子どもが、これから生きていくために必要なことを学べるように、という作者の願いが込められているのです。
グリム童話・長靴をはいた猫では、先に述べた教訓のほかにもう一つあると言われています。
物語の冒頭で、父親の遺産を分ける際に、末息子は猫をもらいました。
そこで末息子はがっかりしますよね。
猫なんてなんの役にも立たないと思っていたのです。
しかし猫は末息子の人生を180度変えてしまいました。
そこから、人や物などの力量を、見かけだけで判断してはいけないという教訓が得られるのです。
役に立たない、意味がないと思っていても、使い方次第でものすごい力を持つものになるかもしれません。
③グリム童話・長靴をはいた猫と全く違った新たな物語が存在する?
2011年、『シュレック』や『マダガスカル』などの大ヒット映画を生んだドリームワークス・アニメーションによる『長ぐつをはいたネコ』が上映されました。
しかしこれは、グリム童話・長靴をはいた猫とは全く違った物語です。
実は、2004年の『シュレック2』に、プスという名前の長靴をはいた猫のキャラクターが登場しており、これはそのプスを主人公としたスピンオフ作品なのです。
あらすじをご紹介します。
プスは魔法の豆を探している途中で、黒猫のキティ、旧友のハンプティ・ダンプティに出会います。
ハンプティ・ダンプティは、魔法の豆の木で雲の上の巨人の城へ行き、伝説の金の卵を手に入れようとプスに持ちかけました。
プスは、これで無実の罪を晴らせるのでないかと考え、3人で魔法の豆と金の卵を手に入れる冒険へ出掛けます。
グリム童話・長靴をはいた猫のおすすめ絵本を紹介
ここでは、グリム童話・長靴をはいた猫のおすすめ絵本をご紹介します。
同じ物語でも、絵本によって雰囲気が違っておもしろいですよ。
読み手の年齢や性格、好みに合わせたものを選びましょう。
それぞれの絵本のおすすめポイントもまとめていますので、ぜひご覧ください。
『ながぐつをはいたねこ』
出典:金の星社
文・絵:いもとようこ
出版社:金の星社
発行日:2016年5月
値段:1400円+税
対象年齢:3歳頃から
『ながぐつをはいたねこ』のおすすめポイント
子どもから大人まで大人気の、いもとようこによる絵本です。
温かみのあるイラストが物語の世界へ引き込んでくれます。
小さい子どもにもわかりやすい易しい言い回しで、最後まで楽しめますよ。
この絵本では、猫がとてもチャーミングに描かれていて、そのかわいらしいセリフにも注目です。
『ながぐつをはいたねこ』
出典:小学館
絵:馬場のぼる
出版社:小学館
発行日:2007年4月27日
値段:1000円+税
対象年齢:3歳頃から
『ながぐつをはいたねこ』のおすすめポイント
数々の絵本の和訳をしている奥本大三郎と、「11ぴきのねこ」シリーズでお馴染みの馬場のぼるによる絵本です。
11ぴきのねこを思い出させるタッチの表紙に、つい手を取ってしまいます。
登場人物たちが愛くるしく、最後まで楽しく見ることができます。
小さい子どもにも分かりやすい簡単な文章なので、物語の世界にすっと入っていけますよ。
『長ぐつをはいたねこ』
出典:福音館書店
訳:やがわすみこ
出版社:福音館書店
発行日:1980年5月20日
値段:1200円+税
対象年齢:5歳頃から
『長ぐつをはいたねこ』のおすすめポイント
猫の凛々しい表情が目を惹きます。
5歳頃からの幼児向けなので、挿し絵も少し大人っぽい雰囲気がありますね。
この絵本は、猫目線でのお話が付け加えられているので、物語をより一層楽しむことができます。
文字数も多く、読み応えたっぷりなので、大人も十分満足できますよ。
グリム童話・長靴をはいた猫のまとめ
いかがでしたでしょうか。
グリム童話・長靴をはいた猫の魅力が伝わったのではないでしょうか。
物語をさまざまな視点から見てみると、今までと違った雰囲気も楽しめます。
昔から広く語り継がれている物語ですから、これからも子どもたちにどんどん伝えていきたいですね。
グリム童話・長靴をはいた猫は、たくさんの絵本が出ています。
子どもの好みに合った絵本を見つけて楽しみましょう。
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