昔話の中でも小さな一寸法師が針を刀に鬼と戦い、大活躍するお話は子供たちも大好きですね。
そんな昔から親しまれている、一寸法師のお話は時代によって違いはあるのでしょうか。
また物語の由来はどのようなものなのでしょうか。
登場人物やあらすじも含めてさまざまな角度から一寸法師をご紹介します。
また英語が併記された一寸法師の絵本もご紹介しますので、昔話を英語で楽しむ絵本の一つとしてぜひ参考にしてみてください。
昔話・一寸法師の登場人物
それでは一寸法師に出てくる登場人物をご紹介します。
おじいさんとおばあさん:子供のいなかった二人は神仏に親指ほどの子供でもいいから恵んでくださいとお願いします。すると本当に小さな一寸法師が生まれました。
三条の宰相:都の三条のまちの宰相。一寸法師をお屋敷で働かせます。
姫さま:三条の宰相の娘。一寸法師が気に入っています。
鬼たち:姫様をさらおうとします。
昔話・一寸法師のあらすじ内容
摂津の国の難波の里に、仲が良いけれど子供のいないおじいさんとおばあさんがいました。
そこでふたりは住吉明神の神様に子供を授かりたいとお願いに行きます。
「神様、どうぞ私たち夫婦に子供をおさずけください。親指ほどの小さな子供でもかまいません」
しばらくして二人は本当に親指ほどの小さな赤ちゃんを授かりました。
そこでおじいさんとおばあさんは赤ちゃんに「一寸法師」と名前をつけ、大切に育てました。
一寸法師はいくつになっても小さな姿のままで、まわりの子供たちは一寸法師を「ちびすけ」と呼んでバカにしましたが、一寸法師はちっとも気にしませんでした。
けれどいつも早く大きくなっておじいさんとおばあさんに孝行をしたいと思っていたのです。
そして一寸法師は12歳になるとおじいさんとおばあさんに言いました。
「私は都に行きます。都で立派なさむらいになりたいのです」
おじいさんとおばあさんはそれを聞いて驚きましたが止めるわけにもいきません。
「それなら行っておいで」
「ありがとうございます。では縫い針とお椀と箸をひとつずつください」
おじいさんとおばあさんが用意してくれた縫い針を刀にして腰に差し、箸をかいにしてお椀の船で、一寸法師は淀川を渡って都へと旅立ちました。
都へ着くと一寸法師は三条のまちまで行きました。
そこにはとりわけ立派な身分の高い宰相様のおやしきがあったのです。
一寸法師はそのおやしきへ入ると大きな声で言いました。
「私の名前は一寸法師です。このおやしきで働かせてください」
宰相様が出てきて、一寸法師を見てびっくりしましたが、その小さな姿がめずらしかったのでおやしきで働くことをゆるします。
よくはたらく一寸法師はすぐに宰相様にもその娘の姫様にも気に入られました。
ある日姫様は一寸法師に言いました。
「これから清水の観音様におまいりに行くので、ついてきなさい」
一寸法師は腰に縫い針の刀をさして姫様のおともをしました。
清水の観音さまのお参りをすませて帰る途中で、乱暴な二匹の鬼があらわれ、お姫様をさらおうとしました。
「ぶれいものの鬼め!姫様をさらうなど許さぬぞ!」
一寸法師はそう言うと二匹の鬼の前に立ちはだかりました。
昔話・一寸法師の最後の結末は?
鬼たちは小さな一寸法師を見ると大笑いし、一匹の鬼が一寸法師をつかまえてひとのみにしてしまいました。
けれど一寸法師は縫い針の刀で鬼のお腹の中をあちこちさして大暴れ。
鬼はたまらず一寸法師を吐き出してしまいました。
すると怒ったもう一匹の鬼が今度は一寸法師をひとのみにします。
一寸法師は鬼の口から鬼のまぶたの方に這い上がり、縫い針の刀で何度も目をつつきました。
「これはたまらん」
鬼たちはそう言うと、持っていた打出の小槌を放り出して一目散に逃げました。
姫様は打出の小槌をひろうと一寸法師に言いました。
「これは鬼の宝の打出の小槌です。これを振るとどんな願いもかなうのです」
「それではそれを振って私を大きくしてください」
一寸法師の頼みに姫様は打出の小槌を振りながら言いました。
「一寸法師よ。大きくなあれ」
すると一寸法師はたちまち大きな立派な若者の姿になりました。
一寸法師は姫さまと結婚し、都におじいさんとおばあさんも呼び寄せてみんなで幸せに暮らしました。
昔話・一寸法師から与えられる教訓とは?
一寸法師からは人は姿かたちではなく、行いこそが大切なのだ、という教訓が読み取れますね。
また一寸法師は育ててくれたおじいさんとおばあさんに感謝しており、なんとかその恩を返したいと思っている孝行息子でもあります。
そう考えると親への孝行を描いた物語でもあります。
また鬼は、小さいからと一寸法師をバカにして甘く見ていたら、その小ささを生かした一寸法師にまんまとこらしめられました。
小さいからといってもその力を侮っていては痛い目を見る、人のことを見た目だけで判断してはいけない、そんな教訓も含まれています。
さらには小さいものが最後には立派な姿になる──一人前の姿になる、というラストは西洋の英雄譚にも通じるものがあります。
昔話・一寸法師はどこのお話?由来や原作は?作者やモデルとなった人物はいる?
作者は未詳の日本の各地に伝わる御伽噺のひとつです。
室町時代に成立した物語と言われていますが、江戸時代にお伽草子の一冊としても出版され、明治時代には子供の読み物として普及し定着しました。
小さな姿の主人公が活躍する話は日本神話の少彦名(すくなひこな)神などにもそのルーツは見られ、広い目で見ると一寸法師のモデルとも言えます。
またヨーロッパをはじめとするドイツの「親指小僧」やイギリスの「トムサム」、その他南アジアに分布している「小人」の物語との類似性も指摘されています。
いずれにせよ「小さい姿」の主人公が活躍する話は世界中で見ることができます。
また一寸法師という名前ではなく、豆助や豆一、五分次郎、親指太郎と呼ばれている地方もあるようです。
昔話・一寸法師のおすすめ絵本を紹介
それではここからはおすすめの一寸法師の絵本をご紹介します。
『いっすんぼうし』
出典:honto公式サイト
絵:高見 八重子
出版社: 鈴木出版
発行年月:2006年1月
値段1100円+税
対象年齢:3歳から
『いっすんぼうし』のおすすめポイント
文章はすべてひらがなで書かれていて、小さな子でも読みやすい絵本です。
リズミカルな文章は読み聞かせにも向いており、親子で読むのにぴったりの一寸法師の絵本です。
素朴で淡いイラストは昔話の世界観をよく表現しており、鬼のイラストもユーモラス。
小さな一寸法師の活躍を楽しむことができますよ。
『一寸法師』
出典:honto公式サイト
絵:三輪 良平
監修:梅原 猛
監修:上田 正昭
出版社: 「京の絵本」刊行委員会
発行年月:1999年10月
値段:1800円+税
対象年齢:小学生から
『一寸法師』のおすすめポイント
こちらの一寸法師の絵本は場面によって英語の文章が併記されていて、英語の学習にも向いている絵本です。
イラストは日本画家の三輪 良平が描いており、浮世絵のように美しい画面は海外の人に日本の昔話を紹介するのにも向いています。
歴史あるお伽噺を絵本から学んだり、感動したりするのにふさわしい一寸法師の絵本です。
昔話・一寸法師のまとめ
いかがでしたか。
おなじみの一寸法師のお話もこうして考察すると、面白いだけでなくさまざまな教訓や、物語としての愉快さをあらためて感じます。
願いを叶える打出の小槌などは、人々の色々な願望も込められているのでしょう。
そんな、昔のおとぎ話の奥深い世界にぜひ触れてみてくださいね。
コメント