日本の伝統的な昔話として思い浮かぶのは鶴の恩返しではないでしょうか。
今回は鶴の恩返しのあらすじや教訓、英米で翻訳されて話題となった、いわさきちひろの絵本『つるのおんがえし』も紹介します。
鶴の恩返しは、英語でThe Grateful Craneとタイトルがつけられ、世界で親しまれています。
昔読んだけれど、大人になってどんな話だったか忘れてしまっている人も多いはず。
まずは、鶴の恩返しの登場人物とあらすじから振り返っていきましょう。
昔話・鶴の恩返しの登場人物
鶴の恩返しの登場人物は以下の通りです。
おじいさん:貧しいが心優しい性格。罠にかかっていた鶴を助ける
おばあさん:おじいさんの妻
鶴:罠にかかっていたところをおじいさんに助けられた
美しい娘:道に迷ってしまい、おじいさんとおばあさんの家を訪ねてくる
それでは、登場人物がわかったところで、あらすじ内容を詳しくみていきましょう。
昔話・鶴の恩返しのあらすじ内容
ある冬の日に、おじいさんは罠にかかっていた鶴を見つけました。
「かわいそうに…今、助けるぞ」
おじいさんは、罠から鶴を逃がしてやります。
雪が激しく降るその日の晩。
「道に迷ってしまったので、一晩泊めてもらえませんか?」
大雪の中を美しい娘が訪ねてきました。
親を亡くして、顔も知らない親戚を訪ねるところを道に迷ったとのこと。
かわいそうに思った優しいおじいさんとおばあさんは、娘を一晩泊めてやることにします。
ところが、雪はひどくなり数日たってもやみません。
優しい娘はおじいさんとおばあさんの世話をします。
子供のいない二人は嬉しくてたまりませんでした。
そんなある日、娘がこんなお願いをしてきたのです。
「お二人の娘にして下さい」
おじいさんとおばあさんはそのお願いを喜んで受け入れました。
「布を織りたいので糸を買ってきてほしい」
と娘が頼むので、おじいさんは糸を買ってきてやりました。
「絶対に部屋をのぞかないでください」
部屋にこもった娘は、3日間も休むことなく布を織り、その美しい布は高く売れました。
「これを売って、また糸を買ってきてください」
娘が織った2枚目の布はさらに高く売れて、おじいさんとおばあさんはお金持ちになりました。
娘が3枚目の布を織るために部屋にこもると、初めのうちは約束を守っていたおじいさんとおばあさんですが、気になり部屋をのぞいてしまいます。
「どうやってあんなに美しい布を織っているのだろう」
部屋をのぞくと、そこにいたのは娘ではなく、鶴が自分の羽を織りこんで布を作っていたのです。
鶴は羽のほとんどが抜かれ、かわいそうな姿になっていました。
驚いているおじいさんとおばあさんに、娘は以前おじいさんに助けてもらった鶴で恩返しするために来たと話します。
「このままお二人の娘でいるつもりでした。でも、正体を見られてしまったのでもうここにはいられません」
鶴の姿になった娘は空へ帰っていきました。
昔話・鶴の恩返しの最後の結末は?
部屋をのぞかないでほしいと、おじいさんとおばあさんにお願いしていたにもかかわらず、機織り部屋をのぞかれてしまった鶴。
おじいさんとあばあさんに正体がばれてしまったので、娘は鶴になり空へ帰っていきました。
鶴の恩返しは、みんなで幸せに暮らしましたというハッピーエンドにはならないのです。
昔話・鶴の恩返しから与えられる教訓とは?
鶴の恩返しの教訓は以下の2点になります↓
罠から救ってくれたおじいさんのために、鶴は美しい人間の娘に変身して、献身的に二人に尽くします。
自分の身を削って美しい布を織り、貧しかったおじいさんとおばあさんをお金持ちにしてやりました。
とはいえ、自分の身を削って尽くしていた鶴は、おじいさんとおばあさんが部屋をのぞかなかったとしても、命が危うくなってしまったかもしれないのです。
無理をしなければ維持できないような関係は続かない。
そのような関係は、結局はお互いのためにはならないと私たちに教えてくれています。
親しい仲になると、つい約束をないがしろにしてしまったり、慣れが甘えに変わってしまうことがあります。
おじいさんとおばあさんは、最初、優しく美しい娘がそばにいてくれるだけでいいと思っていました。
しかし、娘が織った布が高値で売れると、それが当たり前になってしまい、部屋をのぞかないでほしいといった娘の約束も破るようになってしまいます。
それでも、「部屋にこもりきりで心配だった」と言えば、優しい娘に許してもらえると思っていたのではないでしょうか。
どんない親しい仲であっても踏み込まれたくないことはあるもの。
親しい人との約束ほど、守るようにしてきましょう。
昔話・鶴の恩返しはどこのお話?由来や原作は?作者やモデルとなった人物はいる?
鶴の恩返しは、江戸時代から語り継がれてきた民話ですので作者はいません。
動物が人間に恩を返しに来るといった話は昔から存在しており、鶴の恩返しとよく似た話は日本各地で報告されています。
発祥の地として有名なのは山形県南陽市。
ここは鶴布山珍蔵寺(かくふざんちんぞうじ)があり、鶴の恩返しの舞台になった場所として知られています。
他にも、鶴女房やオペレッタの夕鶴も有名な話です。
あらすじで紹介した鶴の恩返しとは登場人物と内容が違い、鶴を助けたのがおじいさんではなく若者で、美しい娘に変身していた鶴と夫婦になるというものもあります。
昔話・鶴の恩返しのおすすめ絵本を紹介
ここまで、鶴の恩返しの登場人物やあらすじ、教訓をお伝えしてきました。
有名な物語なのに知らなかった部分も多かったのではないでしょうか。
もう一度、鶴の恩返しが読みたくなった人におすすめの絵本を紹介します。
『つるの おんがえし』
出典:amazon.co.jp
絵:いわさき ちひろ
出版社:偕成社
発売日:1966年10月1日
値段:1,320円
対象年齢:4歳以上
『つるの おんがえし』のおすすめポイント
いわさきちひろのイラストが美しい『つるのおんがえし』。
英米でも翻訳されて評判のよいこちらの作品は、日本人だけでなく外国の人にも心に響きます。
この作品は4歳から読めるので特におすすめ。
日本の伝統的な物語に触れるきっかけになる絵本です。
機織りの音がリズムよく入ってくるので、読みやすく記憶に残ります。
ちんからからとんとん ちんからからとんとん
と、親子で一緒に歌いたくなってしまうはずですよ。
昔話・鶴の恩返しのまとめ
ここまで鶴の恩返しを紹介してきましたがいかがでしたか?
日本人なのに意外と知らなかったり、忘れている部分が多かったのではないでしょうか。
約束を守ることの大切さや、恩を返すことの美しさを私たちに教えてくれています。
また読んでみたい、子どもに読み聞かせてあげたいと思ってもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。
ここまでお付き合いありがとうございました。
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