皆さんはグリム童話・黄金の鳥を知っていますか?
他の有名な童話に比べると知らない方も多いかもしれません。
作者はグリム兄弟で、ドイツの昔話を編集して書かれた作品になります。
原作のドイツ語版に加え、日本語やスペイン語、英語にも訳され世界で読まれている有名なお話です。
この記事では、グリム童話・黄金の鳥のあらすじや考察、登場人物などをご紹介します。
何度も登場するキツネに注目ですよ!
読み聞かせにおすすめの絵本なども紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
【黄金の鳥の登場人物】グリム童話・黄金の鳥の登場人物と名前
たくさんの登場人物が出てくる、グリム童話・黄金の鳥。
主人公のハンス王子はもちろん、キーアニマルとなるキツネにも注目です!
ハンス王子:物語の主人公で、カイゼル城の3番目の王子。
自分の身の丈ほどもある大剣を持ち歩く、のんびり屋でお人好しな少年。
キツネ:森に住んでいる人語を話し、衣服を身に纏い、二足歩行で歩くキツネ。
飄々とした性格をしているが、たびたびハンス王子を助けてくれる。
カネマッチ王:カネマッチ城の王。
金の鳥:黄金に耽溺している魔女の金色の鳥。
ハンスに羽を1枚奪われる。
ローランド姫:可愛らしい見た目とは裏腹に、勝気な性格をしている白バラ城の姫。
行方不明の兄を探している。
白バラ王:ローランド姫の父親で、白バラ城の王。
城に忍び込んできたハンス王子をすぐに死刑にしようとするほど短気な性格。
クロイラー王子:カイゼル城の1番目の王子。
長身でスリムな体型をしていて、身なりを気にするナルシスト。
弟のワルナー王子とハンス王子を馬鹿にしている。
ワルナー王子:カイゼル城の2番目の王子。
いつもキャンディーを舐めていて、体は肥満体型。
兄のクロイラー王子とハンス王子を馬鹿にしている。
カイゼル王:黄金のリンゴの木が生えているカイゼル城の王。
ハンスたち3人の王子の父親で、欲深い性格をしている。
金の鳥の存在を知ると、手に入れたくなり3人の王子に捕まえてくるように命じる。
日本で公開されたアニメ版・黄金の鳥では、他にも大とりや魔女、山猫なども登場しますよ。
【黄金の鳥のストーリー】グリム童話・黄金の鳥のあらすじ内容
カイゼル王の城には、毎年黄金のリンゴを実らせるリンゴの木があります。
しかし、毎年夜のうちに黄金のリンゴが1つ盗まれていくのです。
そこでカイゼル王は、3人の王子を見張りにつけることにしました。
1番目の王子と2番目の王子は真夜中になると眠気に勝てず、翌朝にはリンゴがなくなっていました。
末っ子の3番目の王子は唯一寝ずに見張りを続け、リンゴを盗んでいたのは黄金の鳥であることを知ります。
3番目の王子であるハンス王子が、逃げようとする黄金の鳥に矢を放つも逃げられてしまいました。
ハンス王子は黄金の鳥が逃げる際に落とした1枚の羽を王様に見せることにしました。
すると、黄金の羽の素晴らしさに魅せられて、王様は黄金の鳥を手に入れると言い出したではありませんか。
王様は3人の王子たちを次々と旅に行かせ、黄金の鳥を捕まえてくるよう、命じます。
1番目と2番目の王子である、クロイラー王子とワルナー王子は、途中で出会ったキツネの助言を無視し、明かりのついた楽しそうな宿に入ってしまいます。
結果、王様からの命も黄金の鳥のこともすっかり忘れてしまい、贅沢三昧に暮らし始めてしまいました。
最後に末っ子のハンス王子が反対する王様を説得し、旅に出ます。
ハンス王子は2人の兄のようにキツネの助言を無視することなく、静かな宿で休むことにします。
すると翌朝、再びキツネが現れて黄金の鳥の居場所を教えてくれました。
キツネは、黄金の鳥の居場所や、その先の進み方を助言してくれました。
「黄金の鳥は金のカゴに入れてはいけない。木のカゴに入れなければならない。」
と言います。
しかしハンス王子は、こんなにも美しい鳥をみすぼらしい木のカゴになんて入れられない、と金のカゴに入れてしまいました。
するとどうでしょう。
黄金の鳥はとても大きな声で鳴き出してしまい、ハンス王子は牢に入れられ捕まってしまいます。
翌朝、ハンス王子は死刑を命じられますが、カネマッチ城の王であるカネマッチ王は
「もしも風よりも速く走る金の馬を見つけてきたら、命を助け、黄金の鳥もやろう」
と言いました。
戸惑う王子にまたも助言をしてくれたのは例のキツネ。
「黄金の馬のところへどうすれば行けるか教えてあげましょう」
と言うと、
「黄金の馬を見つけても黄金の鞍をつけてはいけませんよ、木と皮の粗末な鞍をつけるのです」
しかしハンス王子はまた同じ失敗をしてしまいます。
どうして助言を聞かないのでしょうか。
翌日また死刑宣告を受けたハンス王子。
しかし王様は、
「黄金の城の美しい姫を連れてくれば、命を助け、黄金の馬もやろう」
と言いました。
ここでもまた、助けてくれるのは例のキツネ。
黄金の城の姫のところへ行く方法を教えてくれますが、
「姫に両親への別れの挨拶をさせてはいけない」
と言います。
ですが、ここでも同じ失敗を繰り返すのがハンス王子。
助言を聞かなかったせいでまた牢屋に入れられてしまいます。
翌朝王様がやってきて
「窓の向こうに邪魔な山があって景色が見えぬ。1週間以内に取り除くことができたら、命を助け、姫もお前にやろう」
と言うのです。
王子は山をどうにかしようと奮闘するも、7日経っても何もできずにいました。
するとキツネが代わりにやってやろうと言い、翌朝には山はすっかりなくなっているではありませんか!
それだけでなく、キツネはハンス王子に黄金の鳥、黄金の馬、そして姫を手に入れる方法を助言します。
そしてなんと最後に自分の首を切り落とすように頼んできたのです…!
優しい性格のハンス王子はその頼みを断ると、キツネは
「では私はお別れをするしかありません。ただこれだけお伝えしておきます。」
と話し出しました。
「絞首架の肉を買ってはいけませんよ。それから井戸の端に腰掛けてはいけません」
と。
ハンス王子はしばらく歩き、2人の兄がいる村へ帰ってきました。
すると、2人の兄は絞首架にいるではありませんか。
事情を聞いたハンス王子は特に深く考えることをせず、2人を買い取ってしまいました。
そして、キツネに井戸の端に腰かけてはいけないと言われていたにも関わらず、腰かけてしまうハンス王子。
兄たちはハンス王子が黄金の鳥と馬、姫を連れていることを知り、ハンス王子を井戸へ突き落としてしまいます!
2人の兄はあたかも自分たちの成果であるかのように、王様に報告をします。
しかし、ハンス王子の死を受け、黄金の鳥と馬、そして姫は生気を失っていました。
その頃、ハンス王子はというと、キツネに助けられぼろぼろになりながらも生きていました!
城へ現れたみすぼらしい男を誰もハンス王子だとは気づきませんでしたが、生気を失っていた黄金の鳥が鳴き、馬は食欲を取り戻し、姫が泣き止んだため皆は不思議に思いました。
そして姫から事実を聞いた王様は2人の兄を死刑処分とし、ハンス王子は姫と結婚することになりました。
グリム童話・黄金の鳥の最後の結末は?
最後に例のキツネが現れ、やはり自分を殺し、頭と四足を切るように言うのです。
ハンス王子がキツネの言う通りにすると、なんということでしょうか。
キツネが人間になったではありませんか!
ハンス王子に何度も助言をくれたキツネは、行方不明になっていた姫の兄だったのです!
こうしてやっとキツネにかかっていた魔法が解けたのでした。
【黄金の鳥の教訓】グリム童話・黄金の鳥の意味・教訓、伝えたいこととは?
童話・黄金の鳥の意味について考えてみましょう。
ハンス王子は黄金の鳥、黄金の馬、そして姫を探す旅に出ることになりましたね。
ここで忘れては行けないのが、何度もハンス王子を助けてくれるキツネ。
なかなかのキーアニマルですが、ここではハンス王子が旅に出るきっかけとなった”黄金の鳥”がタイトルに起用されたようですね。
次に『童話・黄金の鳥』の教訓について考えてみます。
この物語の教訓と言えばやはり、
“正直者は救われる”
ではないでしょうか。
何度もキツネの助言に背き、失敗を繰り返すハンス王子ですが、本当はとても優しい心の持ち主。
兄たちがキツネの助言に背くのは自分勝手な理由からですが、ハンス王子は相手への同情からくる失敗でした。
そんなハンス王子だからこそ、何度も失敗する姿を見てもなお、キツネは王子を助けたいと思ったのかもしれませんね。
【黄金の鳥の原作】グリム童話・黄金の鳥の原作・初版は?作者、国や時代についても解説
グリム童話・黄金の鳥の原作はドイツ語で書かれており、『Der goldene Vogel』と表記されています。
のちに、英語タイトルの『The Golden Bird』、日本語タイトルの『黄金の鳥』や『金の鳥』が出版されることになるのです。
作者はグリム童話で有名なグリム兄弟。
グリム童話は創作童話ではなく、グリム兄弟がドイツの昔話を収集し、編集したものなので、黄金の鳥も元は昔話からきているんですね。
【黄金の鳥の都市伝説】グリム童話・黄金の鳥にまつわる都市伝説や疑問について考察
グリム童話・黄金の鳥には、私たちの知るお話の他にさまざまなお話があります。
ここからはグリム童話・黄金の鳥の都市伝説や疑問点について見ていきましょう。
①童話・黄金の鳥は実は怖い話?!
綺麗な黄金の鳥や、黄金の馬、美しい姫が印象的なグリム童話・黄金の鳥。
ですが読み進めてみると、ハンス王子が兄に突き落とされたり、キツネは首や四足を切って殺してくれと頼んできたり。
途中、少し怖い表現も出てきましたね。
最後にはハッピーエンドになりますが、児童向けに作られた童話にしては少し残酷な表現かもしれません。
②童話・黄金の鳥はなぜこのような結末になったのか?
「姫が王さまに事実を話し、嘘をついていたクロイラー王子とワルナー王子が処刑され、ハンス王子と姫は結婚して幸せに暮らしました。」
というハッピーエンドな結末でも終われたであろうこのお話。
ではなぜ、わざわざキツネの話で幕を閉じることとなったのでしょうか。
それはやはり、物語を読む上で絶対に蔑ろにはできないキーアニマル、キツネ。
実は姫の兄だったからこそ、話が上手くまとまって終わりを迎えているのかもしれません。
キツネにされた姫の兄はきっと、妹である姫に幸せになってほしい、そして自分も人間に戻りたいと願っていたのでしょうね。
③黄金の鳥にはフランス版がある?!
パウル・セビオが収集したフランス民謡に『金色のクロウタドリ』というお話があります。
医師から
「王様の病気を治すには、金色のクロウタドリが必要だ」
と告げられ、3人の王子は旅に出ることに。
2人の兄は、いかなる警告も受けることなく宿屋にたどり着きます。
最も若い王子は、宿屋を過ぎた後に彼を援助してくれるウサギに出会います。
ウサギは人語を話し、たびたび王子を助けてくれますが、最後に変身することはありません。
④グリム童話・黄金の鳥は日本アニメ化されていた?!
グリム童話・黄金の鳥が過去に日本でアニメ化されていたことを知っていますか?
1984年に製作された、約1時間ほどの本作にはマッドハウスも製作に関わっています。
製作から遅れること3年、1987年3月14日に一般公開されました。
「こころに愛と勇気と明るさを!楽しさいっぱいのものがたり!!」
をキャッチコピーに「東映まんがまつり」から公開された事実上最後の長編名作アニメです。
【黄金の鳥の絵本】グリム童話・黄金の鳥のおすすめ絵本を紹介
ここからは、グリム童話・黄金の鳥のおすすめ絵本を2つご紹介していきます。
おすすめポイントも合わせてご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
『金の鳥』
出典: Amazon.co.jp
絵:さかたきよこ
出版社:BL出版
発行日:2018年12月25日
値段:1,600円+税
対象年齢:3歳から
『金の鳥』のおすすめポイント
黄金の鳥の原作はドイツ語で書かれたものですが、こちらはブルガリアの昔話。
民族衣裳や建物などがカラフルな色使いで幻想的に描かれています。
さかたきよこが日本で初めて手掛けた絵本です。
表紙に描かれた大きな金の鳥が目印ですよ。
『金の鳥 コーカサスのむかし話』
出典: Amazon.co.jp
絵:シェイマ・ソイダン
出版社:ベネッセコーポレーション
発行日:1989年10月
値段:1,181円+税
対象年齢:小学生から
『金の鳥 コーカサスのむかし話』のおすすめポイント
原作の黄金の鳥とは少しだけ内容が異なるこちらの絵本。
王子たちが黄金のリンゴを必要とする理由に注目です。
登場人物は同じでも、内容が少し違うだけでまた別の本を読んでいるかのような気持ちになりますね。
ぜひ原作と合わせて読んでほしい一冊です。
【黄金の鳥のまとめ】正直に優しい心を持って生きることの大切さ
いかがでしたか?
何度もキツネが助言をしてくれるのに、相手への同情心や優しさから毎回作戦は失敗に終わってしまうハンス王子。
どんくさいと言うかなんと言うか…
読んでいてもどかしくなりますね。
でもそんなハンス王子も、最後には命令されていた黄金の鳥だけでなく、黄金の馬、そして美しい姫を手に入れることができました。
本当にキツネ様々な気はしますが、正直者で優しい性格のハンス王子が幸せになれる最後は納得の終わりかたですね。
グリム童話・黄金の鳥を読む際には、
「悪事をはたらかず、真面目に優しい心を持って行動していれば報われる。」
という教訓も合わせて子どもに伝えていけたらいいですね。
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