おじいさんの大きな胸の中で、やさしく抱かれる子どもの眼差しが印象的な絵本、「モチモチの木」。
その発行は今から40年以上前にあたる1971年と、実に長きに渡り多くの人々に読み継がれてきた絵本です。
時に「怖い絵本かと思っていた」という感想も持たれるほど、独特な世界観を持つ滝平二郎氏の切り絵は、物語の中で実に美しい輝きを放っています。
そして、大人になって再びモチモチの木に出会った読者からは、「改めて子どもに読み聞かせたいと思った」という喜びの声が後を絶ちません。
今回は、日本が誇る不朽の名作「モチモチの木」が描く感動の世界をご紹介いたします。
『モチモチの木』(1971)とはどんなお話【内容とあらすじを紹介】
国語の教科書の題材にもなっている「モチモチの木」は、誰もが一度は耳にしたことのあるタイトルではないでしょうか。
印象的な切り絵の表紙は、子どもの頃に目にしてよく覚えているという方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、その内容を改めて振り返ってみることにしましょう。
『モチモチの木』(1971)の概要
イラスト:滝平 二郎
出版社:岩崎書店
発行日:1971/11/21
価格+税:1,540円
『モチモチの木』(1971)のあらすじ
5さいの豆太は、夜にひとりでおしっこにも行けない怖がりな男の子。
外にあるせっちんの横には、大きな大きなモチモチの木が、幽霊のように空一杯に枝を伸ばしています。
両親を亡くした豆太は、やさしいおじいさんと2人で暮らしています。
「じさまぁ」
どんなにぐっすり眠っていても、豆太がそう呼ぶとせっちんに連れて行ってくれるおじいさん。
ところがある日、大すきなおじいさんが倒れてしまい…。
本当の思いやりとは、やさしさとは何なのか、美しい切り絵の世界で描く名作絵本。
『モチモチの木』(1971)の内容要約
「モチモチの木」は、山の中に暮らすおじいさんと孫をモチーフとした物語です。
お互いを想い合う優しさが、臆病な豆太にある夜、奇跡を起こします。
要約1.臆病でよわむしな男の子、豆太
物語の主人公は、峠の猟師小屋でじさまと暮らす5歳の男の子、豆太。
両親を亡くし、じさまと2人暮らしの豆太は、夜中にひとりでトイレに行くことができません。
豆太のお父さんは、熊と戦って亡くなったほどの度胸ある人物。
64歳になるじさまも、カモシカを追いかけ、岩から岩を飛び回るほどの勇敢な男性です。
「どうして自分だけがこんなに憶病なんだろう…」
外のトイレの横に立つ、大きなモチモチの木を怖がりながら、豆太はそう思うのでした。
要約2.強くやさしいおじいさん
ところがある晩、いつも強いおじいさんが腹痛で苦しみ出してしまうのです。
11月にあたる霜月の真夜中、外には暗く、冷たい闇夜が広がっています。
「だいすきなじさまが、しんじまう」
臆病者で、誰よりも怖がりだった豆太は、助けを呼びに真冬の夜道を駆け出していくのでした。
要約3.豆太の勇気と輝くモチモチの木
痛くて、寒くて、そして何より怖くて…。泣きながら山道を走っていく豆太。
やっとの思いで、お医者さんを連れてじさまの元へと戻ります。
そこで見たのは、暗い夜空を美しく照らす「モチモチの木にともる灯り」。
それは、山の神様のお祭りの日である、霜月二十日の丑三つ時に、勇気ある子どもだけが見られると言い伝えられていた光景です。
亡くなったおとぅも、じさまも見たというモチモチの木の灯り。
「モチモチの木に、ひがついてる!」
それはまるで、じさまを想う豆太の勇気を称えるかのように、冬の夜空を明るく照らしているのでした。
『モチモチの木』(1971)の口コミ・評判

口コミ・評判:★★★★★
滝平さんの切り絵がとにかく素晴らしいです。これからもずっと読み継がれていく物語だと思います。

口コミ・評判:★★★★
子どもの頃はなんだか「怖い」という印象しかなかったんです。
大人になって読み返して、モチモチの木の美しさと物語の優しさを再体験できました。

口コミ・評判:★★★★★
歳を経てから読み返すと、じさまと豆太の心の繋がりに胸が震えます。まるで芸術作品のような素晴らしい絵本です。
『モチモチの木』(1971)の主題・テーマは?
長きに渡り、幅広い年代に読み継がれてきた物語、モチモチの木。
美しい切り絵と力強い文章が織り成す物語は、思いやりとやさしさの意味を人々に伝え続けています。
誰かを思いやる強さとやさしさ
じさまと豆太は、峠の猟師小屋で貧しくも温かい生活を営んでいます。
豆太を胸に優しく抱くじさまと、安堵した表情でほほ笑む豆太の表紙は、2人の幸せな日々を表すかのようです。
たった一人の大切な家族を守るために、怖がりの殻を破り、泣きながら助けを求めて夜道を駆け抜けた豆太。
「じさまがしんじまうほうが、何よりもこわかったから…」
最後にそう話す豆太の言葉は、本当に大切なものは何なのか。守らなければならないものは何なのかということを、読み手に伝えるかのようです。
寒い冬の夜、モチモチの木にあかりが灯る瞬間は、豆太と共に、読者もはっと息を飲む感動に包まれることでしょう。
豆太を見守るじさまの言葉
腹痛で苦しむじさまのために、夜道を駆けていった豆太。
最後のページでは、がんばった豆太にじさまはこう伝えます。
「にんげん、やさしささえあれば、やらなきゃならねぇことは、きっとやるもんだ…」
いつも憶病だった豆太。ひとりでトイレにさえ行くことができなかった豆太。
じさまの無骨でありながら温かい言葉は、そんな豆太に、本当の優しさとは何なのかを教えているかのようです。
そして、そのメッセージは豆太を通し、読者のひとりひとりの心に深く刻まれることでしょう。
力強いストーリーと独創的な切り絵の世界
作者である斎藤隆介氏は、力強いメッセージ性を持つ物語を、優しい語り口で綴る著名な作家です。
そして、誰もが一度は目にしたことのある切り絵を手掛けるのは、日本有数の版画家であり、切り絵作家でもある滝平二郎氏。
両氏が手掛けた物語は、他にも「半日村」や「花さき山」など、一度読めば忘れることのできない独特の世界観を誇るものばかりです。
ページ一面をぱぁっと明るく照らすモチモチの木が印象的な本作は、まさに両氏の代表作であると言えるでしょう。
【ネタバレあり】『モチモチの木』(1971)の感想とレビュー
「モチモチの木」には、子どもをきっかけに再び物語と出会った、読者の感動の声が多く寄せられています。
その喜びは、これからも年代を越え、多くの子どもたちへと読み継がれていくことでしょう。
親から子へ、そして孫へ
息子たちに何度も読み聞かせた絵本です。
孫娘には、物語をしっかりと受け止めることができる時期を選んで読み聞かせました。
最初から最後まで真剣に聞き入ってくれ、孫娘なりに感じる部分があったようです。
豆太の思いやりの気持ちは、こうしてずっと読み継がれていくのでしょう。
数ある絵本の中でも、まさに不朽の名作と言える作品だと思います。
じさまの優しさに胸がじーんと熱くなる
子どもとでかけた本屋さんの絵本コーナーで、久しぶりに見かけた「モチモチの木」。
子どもの頃の記憶をたどると、そこにあるのは「なんだか怖い」というイメージだけでした。
でも、久しぶりに読んでみると、ぱっと明るくなるモチモチの木の美しさにびっくり。
そして、じさまの言葉が心に深く染み入りました。
自分が強くないと、人に優しくすることはできないのですね。
娘も真剣に聞き入っていたので、きっと彼女にとっても大切な一冊になったと思います。
子どもに読み聞かせたい名作
切り絵の世界が印象的ではあったのですが、子どもへの読み聞かせにはいつも他の絵本を選んでいました。
ところが、実際に読んでみると、優しい語り口調にあっという間に引き込まれることに。
親を亡くした豆太に対する、じさまの深い愛情が胸をゆさぶります。
臆病だった豆太が、じさまを想って夜の山を走るシーンには涙が出そうになりました。
斉藤隆介さんと滝平二郎さんの絵本は他にもあるようなので、ぜひ子どもに読み聞かせてあげたいと思います。
『モチモチの木』(1971)は、こんな方におすすめ!
ベストセラーとされる絵本は数多くありますが、その中でも「モチモチの木」は、多くの人に深い感動を与える名作です。
誰かを思いやることの強さと大切さ。
そして、本当の勇気とやさしさとは何なのかを、美しい切り絵の世界と共に読者に教えてくれます。
大切な人と共に「モチモチの木」を読む時間は、子どもの小さな心にも、きっと大きな種となって刻まれていくことでしょう。
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