「嫌いな人なんていなくなってしまえばいいのに!」と、思ったことはありませんか?
複雑な人間関係の中で生活している現代人にとって、どうしてもそりが合わない人が現れてしまうこともありますよね。
そんな経験は大人だけに限らず、子どもだって同じ。
学校で友達に悪口を言われてしまったり、理不尽な理由で先生に叱られてしまったりなどが原因で、身の回りの人を嫌いになってしまうことはあります。
今回紹介する『ころべばいいのに』という絵本は、嫌いな人を憎む気持ちとどう付き合っていくか、さまざまな考え方を教えてくれる作品です。
『ころべばいいのに』(2019)とはどんなお話【内容とあらすじを紹介】
『ころべばいいのに』の気になる情報をご紹介します。
ストーリーの中に、登場人物の背景がそれぞれ隠されていて、何度読んでもおもしろい絵本ですよ!
『ころべばいいのに』(2019)の概要
出版社:ブロンズ新社
発行日:2019/6/19
価格+税:1540円
『ころべばいいのに』(2019)のあらすじ
主人公の女の子には、嫌いな人たちがいます。
「みんな いしにつまずいて ころべばいいのに」
そう思いながら、いつもの帰り道を歩いていく女の子。
嫌いな人たちが不幸になるのを頭の中で思い描いたり、他のことをして気を紛らわせたりなど、自分なりの落としどころをいくつも教えてくれます。
それで解決できればいいですが、どうしても無理なことだってありますよね。
さて、そういうときはどうしたらいいのでしょうか?
みんな仲良くできればいいけれど、そうそううまくいくことはありません。
嫌いな人がいるのは仕方がないこと、大事なのはその気持ちとどう向き合っていくか、ということを教えてくれます。
読み終わったあとは、ちょっと優しい気持ちで世の中を見ることができる絵本ですよ。
『ころべばいいのに』(2019)の内容要約
『ころべばいいのに』の内容をもう少し掘り下げて解説します。
かなり詳しく紹介していますので、ネタバレを多く含んでいます。
まだ、読んだことのない方は、注意して読み進めてくださいね。
要約1.嫌いな人なんて、転んでしまえばいいのに
私に嫌なことをしてくる人たちは、どうして自分にされたら嫌なことを、私にしてくるんだろう。
嫌いな人がしてくる、さまざまな嫌なことを考えていると、ちっとも楽しくありません。
だから、女の子はいつも頭の中で、嫌いな人が嫌な目に合う想像をしています。
そうすると、少しだけすっきりします。
また、関係ないことに集中することも、気持ちを整理するのにはぴったり。
嫌いな人に嫌なことをされたとき、女の子にはたくさんの逃げ道があります。
要約2. 嫌なことがあったときは、自分を思いきり甘やかそう!
それでも、特に嫌なことがあったときは、どうしたってダメなことも。
嫌なことって、突然の土砂降りみたいなものだから、自分ではどうすることもできないですよね。
ひどい土砂降りがあったら、自分だけの避難場所が必要です。
ただ、どんな雨だって止まないことはないから、たまにはびしょ濡れになってみるのもいいかもしれません。
いつ嫌なことが起こってもいいように、自分をいつでも甘やかせるようにしておくことも、突然の土砂降りに対応できるかも。
嫌なことがあったら、お風呂に入ると少しすっきりすることもありますよね。
このように、ちょっと気分転換をするのも、嫌な気持ちを薄めるのに効果的かもしれない、と女の子は考えます。
要約3. 嫌いな人のために悲しんだり、怒ったりするのは損かもしれない
道端のお母さんたちが悪口を言っているのを見て、女の子は思います。
「おとなは みんな なかよくしてると おもってたけど、おとなにも きらいなひとは いるんだね」
そう考えると、「みんな大変なんだな」と思えてしまいます。
今は嫌いだと思っていても、話し合えば分かり合える人もいるかもしれないし、誤解しているだけの人だっているかもしれないですよね。
もしかしたら、嫌いな人って何かにあやつられているのかも?
そう考えると、嫌いな人について嘆いたり、悲しんだりしていると、あやつっている「何か」を喜ばせるだけかもしれない、と女の子は考えました。
だったら、「嫌いだ!」「嫌だ!」と思う気持ちをパワーに変えて、おもしろいことをたくさん考えたほうが素敵です。
きっと、大人になっても嫌いな人や、嫌なことはあるでしょう。
そういうときに、逃げるのがいいのか、それとも立ち向かうべきなのか、自分で決められるようになりたいですね。
『ころべばいいのに』(2019)の口コミ・評判

口コミ・評判:★★★★★
よくある「みんな仲良く」かなと思ったら、そうでなくてびっくり。確かに、現代の子どもたちには、こういう考えのほうが必要かもしれませんね。

口コミ・評判:★★★★★
嫌いな人が嫌な目に合う想像、しますよね。「あるある」がユーモアたっぷりに描かれているのが、おもしろかったです。

口コミ・評判:★★★★★
嫌なことがあったら、それを他のことへ昇華したり、自分を思いきり甘やかしてごまかしたり、子どもたちにさまざまなトラブルシューティングをさりげなく提示してくれているのが素敵です。
『ころべばいいのに』(2019)の主題・テーマは?
この絵本は、嫌なことがあったときの考え方を、子どもにもわかりやすく伝えている絵本です。
絵本の内容から、どのようなことが読み取れるでしょうか。
主題とテーマについて考察していきます。
「みんな仲良くしましょう」ではありません
子ども向けの絵本の多くのテーマで、「みんなで仲良くしましょう」というテーマがあります。
仲間外れや悪口を悪としたり、クライマックスでは憎みあっていた敵と手を取り合ったり。
でも、この絵本はそうではありません。
嫌いな人がいたっていい、嫌いな人が不幸になるのを願ってもいい、それはみんな同じだから気にしなくてもいい。
「いい子でいましょう」という絵本とは少し毛色が違う、肩の力を抜いて読める絵本です。
いい子でいるのに疲れてしまった子どもたちに、おすすめしたい一冊。
嫌なことがあれば逃げていいし、自分を甘やかしてもいい
気が重いことや、嫌いな人との関わりは、誰だって避けたいものです。
立ち向かっていくことも立派ですが、それだけでは疲れてしまいますよね。
この絵本では、嫌なことからは逃げてもいいんだ、ということを教えてくれています。
逃げた自分を責めなくてもいいし、勇気を振り絞って立ち向かえたとしたなら、自分を褒めて、甘やかしてもいいでしょう。
自分の人生は、自分自身のもの。
どうやって自分を安全なところへ逃がすか、頑張った自分にどんなご褒美を与えるか、考えてみるのも楽しいですよね。
より良いコミュニケーションを取るために
物語の中で、主人公の女の子はこう考えています。
「ちゃんと はなしあえば わかりあえるひとだって いるかもしれない」
世の中には、勘違いや行き違いで、嫌いになってしまったり疎遠になってしまったりする人間関係があります。
そんな間柄の人と、わだかまりを抱えたまま過ごすのは、ちょっともったいないですよね。
だから、「嫌い!」と思う人のバックグラウンドを少し考えてみるのがおすすめ。
女の子は、「何かに操られているのでは」と考えましたが、そのように意図しない言動をしてしまっていることもあります。
修復したい人間関係がある場合には、女の子のように、嫌いな人のバックグラウンドを、ちょっとだけ想像してみませんか?
『ころべばいいのに』(2019)の感想とレビュー【ネタバレあり】
ここまで紹介したように、この絵本は児童書の王道とは少し外れた内容です。
ただ、変わった考え方を説いているわけではなく、現代日本を生きやすくする、ごく一般的な考え方。
そんな『ころべばいいのに』を実際に読んでみての、レビューを紹介していきます。
大人にも読んでいただきたいです
嫌いな人に対する接し方がテーマかと思いきや、実は考え方の道しるべとなる絵本です。
嫌なことがあったらどうするか、その答えを明確に持っている人は、大人でも少ないのではないでしょうか。
この絵本は、子どもにもわかりやすく、「人生をよりラクに生きるやり方」を教えてくれる絵本。
だからこそ、嫌なことがたくさんあって疲れてしまった大人にも読んでいただきたいです。
読むと、スッと肩の力が抜けるかもしれませんよ。
よくある児童書とは異なる視点
よくある児童書を想像すると、いい意味で裏切られるでしょう。
人間関係をテーマにした絵本にも関わらず、みんな仲良くしましょう、というテイストのことはどこにも書かれていません。
むしろ、嫌いならそれでいいし、憎んだり恨んだり、さらに悪口を言うことでさえも否定しないのです。
嫌いな人がいてもいい、大切なのは「嫌だ」という気持ちとどう付き合っていくか。
この絵本は、感情を否定せず、それとどう付き合っていくかに重きを置いたもの。
子ども向けの実用書、または自己啓発本のようにも感じられます。
自分に甘くするって素敵なこと
主人公の女の子は嫌なことがあると、たびたびごまかしたり、自分を甘やかしたりしています。
テストでいい点数をとったらご褒美があるように、嫌なことがあったら同じようにご褒美があってもいいですよね。
大人も子どもも、自分が少し頑張ったら、自分を甘やかしてあげてください。
努力することや耐えることは、美徳とされていますが、そんな古くからの考え方を取り去って、新しい選択肢を示してくれる絵本です。
『ころべばいいのに』(2019)は、こんな方におすすめ!
『ころべばいいのに』は、年長さんから小学校低学年くらいの子どもたちにおすすめ。
ちょうど、自分で読めるのはそのくらいの年齢ですが、もっと上の年齢の子どもや大人でも楽しめる絵本です。
他の児童書とは違った考え方をコミカルに描いているため、ぜひ家族みんなで読んでみてくださいね。
今回は、ヨシタケシンスケの絵本『ころべばいいのに』について紹介しました。
人間関係にちょっと疲れたときに読むと、心が楽になるかもしれませんよ。
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