
外を吹く風が日に日に冷たくなる12月。
あたたかいお部屋で、ゆったりとお気に入りの絵本を楽しんでみませんか?
雪遊びやクリスマス、お正月と、絵本の世界には冬をテーマにした作品が盛りだくさん。
今回ご紹介する「しんせつなともだち」も、寒い冬を舞台にした、心をほっと温めてくれる一冊です。
長年に渡り語り継がれてきた名作絵本を、ぜひお子さんと一緒に読んでみて下さいね。
『しんせつなともだち』(1987)とはどんなお話【概要とあらすじを紹介】
『しんせつなともだち』は、1987年の発行以来、30年以上に渡り読み継がれてきた物語です。
物語の原案となっているのは、作者が聞き継いだ朝鮮戦争時代のエピソード。
降りしきる雪の中、ひとつのかぶが、友だちのやさしい想いを伝えます。
『しんせつなともだち』(1987)の概要
イラスト:村山 知義
訳:君島 久子
出版社:福音館書店
発行日:1987/1/20
価格+税:990円
『しんせつなともだち』(1987)のあらすじ
寒い寒い雪のある日。
お腹をすかせたこうさぎは、食べ物を探しに厚いコートを着て外に出かけました。
「おや、こんなところにふたつもかぶがあった」
こうさぎは、深い雪の中にうもれたかぶを見つけます。
こうさぎは喜んでかぶを1つ食べると、もう1つはろばへ届けることにしました。
友だちへの思いやりの気持ちがぐるぐるとめぐる、心温まる名作の絵本。
『しんせつなともだち』(1987)の内容要約
こうさぎがろばを思い、雪の中歩いて届けたひとつのかぶ。
このかぶが、物語の中ではそれぞれの想いを繋いでいくことになります。
最後に、かぶが辿り着いた場所とは…?
要約1.食べ物のない寒い冬
物語の舞台は、辺り一面を真っ白な雪がおおいつくす、寒い寒い冬の一日です。
お腹を空かせたこうさぎは、雪の中、食べ物を探しに出かけることにしました。
そこで見つけたのは、雪に埋もれた2つのかぶ。
「ゆきがこんなにふって、とてもさむい。ろばさんは、きっとたべものがないでしょう」
やさしいこうさぎは、かぶをろばの家に届けるのですが、ろばが留守だったためドアの前にそっと置いて帰ったのでした。
要約2.やさしさのリレー
こうさぎのように、食べ物を探しに出かけていたろばは、家の前に1つのかぶが置かれているのを見つけます。
「どこからきたのかしら?」
ろばは、自分と同じように友だちもお腹をすかせているだろうと、かぶをやぎへ届けることを思いつきます。
1つのかぶは、ろばから山羊へ、山羊から鹿へ…。
そして、最後は鹿の手によって、こうさぎのもとへと届けられるのでした。
要約3.こうさぎのもとに返ってきたやさしさ
こうさぎはぐっすりと眠って、鹿が訪れたことに気が付きません。
鹿は、ドアの前にそっとかぶを置いて帰ることにします。
目を覚ましたこうさぎは、ドアの前のかぶを見つけてびっくり。
でもすぐに、親切な友だちが届けてくれたのだろうと気付きます。
友だちのやさしさを思い、こうさぎは心が温かくなるのを感じるのでした。
『しんせつなともだち』(1987)の口コミ・評判

口コミ・評判:★★★★★
誰かを思いやる気持ちのあたたかさが、静かに心に染み入る絵本です。実際に戦時中にあった話ということで、娘も真剣に聞き入っていました。

口コミ・評判:★★★★
まだ少し早いかなと思いつつ、3歳の息子に読み聞かせてみました。これからお友だちとのつながりが広がる中で、息子も「友だちっていいな」と感じ取ってくれたらうれしいな。

口コミ・評判:★★★★★
日本語訳が心地よく、読み聞かせしていてもあったかい気持ちになれる絵本です。物語はシンプルなのですが、それだけに「しんせつの形」が子どもにもすっと伝わるのだと思います。
『しんせつなともだち』(1987)の主題・テーマは?
相手を想う気持ちがぐるぐると巡る、優しさに溢れた絵本。
作品に込められたテーマは、現在まで数多くの人々に感動を与えてきました。
実話をもとにした物語
本作は、作者の方軼羣氏が伝え聞いた、朝鮮戦争の逸話をもとにした物語です。
野戦病院に、とある劇団が届けたお土産が、いろいろなところを経由し、再び劇団のもとへ戻ってきたという心温まるエピソード。
つらい時期であっても優しい気持ちを忘れないことの大切さは、姿を動物に託し、現在まで多くの人々に読み継がれてきました。
戦争という辛い環境で、実際にあったエピソードだからこそ、長い年月が経った今でも多くの人々に支持されているのでしょう。
友だちを想うやさしい気持ち
こうさぎがろばへと届けた1つのかぶは、めぐりめぐって、再び子うさぎのもとへと帰ってきます。
家の前に置かれたかぶを見つけたこうさぎは、それが友だちからの贈り物だとすぐに気が付きます。
それは、普段から友だちとこうさぎとの間に、信頼関係が築かれていたからこそだと言えるでしょう。
かぶが動物たちのあいだを巡る繰り返しの物語は、小さな子どもにはゆかいでふしぎな話のように映ることもあるかもしれません。
それでも、繰り返しページをめくるうち、子どもの心にはそのやさしさが自然と伝わっていきます。
村山和義氏の描く雪景色と動物たち
かぶをやりとりする動物たちを描くのは、前衛芸術家で舞台演出家の、村山和義氏です。
表紙のこうさぎは、はらはらと降る雪の中、先のとんがったブーツを履いて、小さなリボンのついたグリーンのコートに身を包んでいます。
一面の雪景色はひんやりとした冬の空気を思わせますが、絵柄はふうわりとやわらかく、どこか温もりさえ感じさせるよう。
登場する動物たちはどれも愛らしく、その表情は読み手の想像力をかきたててくれます。
【ネタバレあり】『しんせつなともだち』(1987)の感想とレビュー
相手を思いやる気持ちの大切さを教えてくれる「しんせつなともだち」。
発行から30年以上たつ作品には、次のような感想が寄せられています。
やさしい気持ちがつながっている
息子が保育園から借りてきた絵本です。
リアルな動物の表紙に少しどきっとしたのですが、その内容の深さにとても感動しました。
友だちを想うやさしい気持ちが、ぐるっと一周してまた戻って来るなんてすてきですよね。
長い間読み継がれてきたのも納得です。
今のような寒い冬の夜には、特に気持ちをあたたかくしてくれるお話でした。
実話をもとにしたやさしい絵本
おなかをすかせたお友だちに、それぞれが食べ物を届けていくやさしいお話。
朝鮮戦争中の実話をもとにしたという物語で、3歳の息子には重たいのでは…と思っていたのですが、全くそんなことはありませんでした。
登場人物はかわいらしい動物たち。
それぞれがお友だちを大切にする気持ちは、小さな子どもにもしっかりと届くと思います。
また、お友だちとのつながりが始まる幼少期に読んでもらいたい素敵な絵本です。
寒い冬に読み聞かせたい絵本
ひんやりとした空気が流れる冬の時期になると、子どもと読みたくなる絵本です。
お友だちへと食べ物を届ける思いやりの気持ちが、心をほっと温かくしてくれます。
小さな子どもにも分かりやすい親切のかたちなので、読み聞かせにもぴったりなのではないでしょうか。
印象的な動物の絵柄も、物語に深みを与えていてとっても素敵だと思います。
『しんせつなともだち』(1987)は、こんな方におすすめ!
降りしきる雪の中、ひとつのかぶが、「しんせつな気持ち」を運んでいく絵本。
「しんせつなともだち」は、小さな子どもにも分かりやすい形で、人を想う優しさを伝えてくれる一冊です。
お外に冷たい風の吹く冬の日に子どもとぎゅっと寄り添いながら、ぜひゆっくりと読み聞かせの時間を楽しんでみて下さいね。