冷たい冬の空気を感じると、ふと心に思い出す絵本はありませんか?
あらすじはおぼろげだけれど、遠い記憶に残る一冊。
「手ぶくろを買いに」は、30年以上に渡り多くの人々の心に刻まれてきた、新美南吉が紡ぐ物語です。
今回は、冬の絵本タイムにおすすめしたいベストセラー「手ぶくろを買いに」の世界をご紹介します。
『手ぶくろを買いに』(1988)とはどんなお話【内容とあらすじを紹介】

1988年に発行された絵本「手ぶくろを買いに」は、日本が誇る名作家、新美南吉の代表作とされる作品です。
ここでは、教科書にも取り上げられたその物語を、あらためてご紹介いたします。
『手ぶくろを買いに』(1988)の概要

イラスト:黒井 健
出版社:偕成社
発行日:1988/3/1
価格+税:1,540円
『手ぶくろを買いに』(1988)のあらすじ

きつねの親子が住む山に、今年もさむいさむい冬がやって来ました。
お母さんぎつねは、つめたい子ぎつねの手を温める手ぶくろを買ってあげようと考えます。
しかし、お母さんぎつねは、町で怖い思いをしたことを思い出し、足を進めることができません。
仕方なく、子ぎつねの片方の手を人間の子どもの手に変え、1人で買い物に行かせることを決心します。
「人間に怪しまれないように、お店では必ず人間の方の手を出すように」
そう教えられていたはずの子ぎつねは、細く開いたお店の扉の間から、間違ってきつねの手を差し出してしまうのでした…。
『手ぶくろを買いに』(1988)の内容要約

お母さんが心配する中、ひとりで町へ出かけていった子ぎつね。
その物語の世界を、もう少し詳しく掘り下げてみましょう。
要約1.お母さんぎつねの優しい気持ち

寒い冬の日。小さな子ぎつねの手は、冷たい雪で牡丹色になってしまいます。
優しいお母さんぎつねは、子ぎつねの手を取り毛糸の手袋を買ってやろうと思いつくのでした。
2人で町へと出かけていったお母さんと子ぎつね。
ところが、お母さんぎつねは、人間の怖さを思い出し、足が進まなくなってしまうのです。
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要約2.ひとりで買い物に出かける子ぎつね

「にんげんは、おそろしいものなのよ」
お母さんは子ぎつねにそう言い聞かせると、小さな子ぎつねの手を人間の子どもの手に変身させます。
帽子屋さんに行ったら、「この手に合う手袋をちょうだい」と人間の手を差し出すように教えられた子ぎつね。
ひとりで町へ出かけた子ぎつねは、目当ての帽子屋さんを見つけ「こんばんは」とその戸を開きます。
ところが、お店の光があんまりにまばゆくて、子ぎつねはきつねの手を差し出してしまうのでした。
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要約3.人間のやさしさに触れお母さんの元に

帽子屋さんのおじさんは、キツネが手ぶくろを買いに来たと気付きながらも、何事もなかったかのように小さな手ぶくろを売ってくれます。
帰り道、温かそうに光る窓の向こうに、人間の親子の声を聞く子ぎつね。
たちまちお母さんが恋しくなり、お家への帰り道を急ぎます。
無事に戻ってきた子ぎつねに、ほっと胸をなでおろすお母さんぎつね。
「ほんとうに、人間はいいものかしら」
そう、何度も自分に問いかけるお母さんぎつねのそばで、大きな冒険を終えた子ぎつねは、嬉しそうに手ぶくろを抱きしめるのでした。
『手ぶくろを買いに』(1988)の口コミ・評判


口コミ・評判:★★★★★
人間もきつねも、子どもを想う気持ちは同じですよね。「人間はこわいもの」と思い込んでいたお母さんのラストのセリフは、なんだか人間と動物の共存を考えさえるようです。

口コミ・評判:★★★★
手ぶくろを買いには、いろんな方の絵で描かれていますが、黒井健さんのやさしい絵柄のこの絵本がわたしは大すきです。読むたびに温かい気持ちになります。

口コミ・評判:★★★★★
美しくあたたかい、新美南吉さんの世界観が大好きです。子どもの頃から読んできた一冊。娘も大好きになってくれたらいいな。
『手ぶくろを買いに』(1988)の主題・テーマは?

幅広い年代の人々から愛されている名作絵本「手ぶくろを買いに」。
そこには、一体どのようなテーマが込められているのでしょうか。
子どもを見守る母親の葛藤

子ぎつねが出かける町は、お母さんぎつねが大変怖い思いをした場所です。
子ぎつねにとっては、初めてのおつかい。そして初めての冒険。
大切な子ぎつねを町へ送り出すお母さんの気持ちは、小さな子どもをお持ちの親御さんであれば共感する部分が多いのではないでしょうか。
親の心配とは裏腹に、子ぎつねは間違ってきつねの手を出したにもかかわらず、無事に手ぶくろを買うことに成功します。
手袋だけでなく、人間の優しさや温もりとともに無事にお母さんの元に戻る子ぎつね。
ひとりで町へ出かける子ぎつねの姿からは、大人の創造をはるかに超えた、子どものたくましさを感じ取ることができるでしょう。
黒井健が描く新美南吉の美しい世界

新美南吉氏の代表作である「手ぶくろを買いに」は、現在まで多くの挿絵で描かれてきた作品です。
その中でも、多くの人々に支持されているのが、「ごんぎつね」も手掛けた黒井健氏のイラスト。
冬の景色に寄り添うきつねの親子は、まるで雪綿のようにふんわりと柔らかな毛に包まれています。
帽子屋の戸の隙間からこぼれる光や、人間の親子が住む部屋の灯りは、雪道と子ぎつねを明るく照らすよう。
冬の寒い日にも、絵本を開く読者の心を温かく包んでくれることでしょう。
心に響くお母さんぎつねの一言

「手ぶくろを買いに」は、新美南吉の美しい日本語が多くの人に愛される作品です。
太陽が雪に反射した瞬間を「目に何かが刺さった」と表現する様は、読み手に美しい銀世界をイメージさせてくれます。
足が進まなくなってしまうほど、かつて町で怖い思いをしたお母さん。
愛する子ぎつねにも「にんげんは怖いもの」と何度も言い聞かせます。
そのお母さんは子ぎつねの姿に、「にんげんは本当にいいものかしら」とつぶやくのです。
美しく幻想的な物語が続く中、最後のその台詞は読者をはっと現実に引き戻すかのよう。
新美南吉が物語に託した深いメッセージは、動物と人の共存について親子で考えるきっかけを与えてくれます。
【ネタバレあり】『手ぶくろを買いに』(1988)の感想とレビュー

ベストセラーである本作は、多くの方からの口コミや感想が寄せられている作品です。
こちらでは、読者の感動が伝わるレビューをご紹介いたします。
きつねの親子の姿に胸が温まる

子どもの頃から何度も読んだ作品ではありますが、黒井健さんの描く幻想的なこちらの絵本は、大すきな一冊です。
人間からひどい目にあったお母さんと、人間からやさしくしてもらう子ギツネ。
どちらも同じ人間なのに、一体どっちが本当なのだろうと、読みながら考えてしまうこともあります。
今年の冬は初めて娘と一緒に読んだのですが、心がほっとあったかくなりました。
子ぎつねの姿にどきどき

子どもの頃に読んで、ずっと印象に残っていたお話です。
大人になってから読んでみると、町に子ぎつねを送り出したお母さんの気持ちを思ってハラハラしてしまいます。
子ぎつねが間違った手を出した時は、一緒に読んでいた息子もドキドキしていたみたい。
それだけに、無事に子ぎつねが帰ってきた時にはほっとした思いになりました。
冬が近づくと、子どもと一緒に読みたくなる大好きな一冊です。
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新美南吉さんの美しい言葉の世界

舞台は厳しい冬の世界なのですが、丸みのある柔らかなキツネと淡い色使いのイラストが温もりを感じさせてくれます。
子どもが買い物に行く町は、お母さんが体が動かないくらいに怖い思いをした場所。
お母さんはどれだけの覚悟をして子ぎつねを送り出したのだろうと、大人になった今はつくづく考えてしまいます。
新美南吉さんの日本語は本当に美しく、たくさんの子どもに読んでもらいたいと思う作品です。
『手ぶくろを買いに』(1988)は、こんな方におすすめ!

「手ぶくろを買いに」は、新美南吉の美しい日本語が織り成す、きつねの親子の物語です。
柔らかで温かな黒井氏のイラストは、幻想的な雪景色へと読者をいざないます。
言葉の美しさを存分に感じることのできる本作は、子どもへの読み聞かせにもぴったりの絵本。
冬の寒い日、冷たく縮こまってしまいそうな心も、絵本の世界が優しく温めてくれることでしょう。

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